BLEACH 零
□過去(香姫編)
現在(薫、仁、陸人編)
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〜紅院家〜
両親が亡くなってからずっと香姫は護衛の人達と過ごしていた。
2ヶ月経つと家の事もだいぶ落ちついてきたので護衛全員を二週間の休みにすることに決める。
その提案は反発されたが、一人になりたいと説得し、家からは出ないことを条件に渋々納得させた。
一日目と二日目
初めて誰もいないことに寂しく感じたと同時に少しホッとした日。
予想以上に香姫はつまらないと感じた。
三日目
外は激しい雨が降る。
香姫は寝る前に母から貰ったオルゴールの音色に笑みを浮かべていた。
曲が終わったので片づけようと棚に仕舞おうと歩いていた時
「っ…」
しっかりと手に持っていた筈なのに、すり抜けるようにオルゴールが床に落ちた。
蓋の開いたオルゴールからは曲が流れてきたが、落ちた衝撃のせいか音が所々飛んでいて、曲自体も終わりに近かったようで、曲はゆっくり流れる。
「いやっ…」
とっさに拾おうと屈む香姫だが、オルゴールに手を伸ばすと両親が倒れていた姿をふいに思い出してしまう。
ビクリと体を震わせて手を床につき嘔吐とめまいで息が上がった。
思わず護衛の名を泣きながら必死に叫ぶ。
彼等がいない事を忘れたまま叫ぶ香姫は、疲れたのかその場で横になり眠ってしまった。
次に目が覚めた時には外は明るくなっていて、香姫は身体がだるく寒気がしていたのだがあまり気にせずその場を去って行く。
ふと目に入ったオルゴールはただの木箱にしか見えなくてそのまま素通りして布団で眠った。
目が覚めても布団から起きられず、一日をほとんど寝て過ごす。
四日目の朝
喜助が紅院家に来た。
護衛長に呼ばれたためだが、彼は普段なら部屋まで案内するのに今日に限って玄関までの案内に不思議になる。
屋敷の中にも人の気配は無く、護衛達がいない事に不思議に思いつつ、いつもの部屋の扉を開けた。
すると無惨に散る破片を見て何かが変だと察知して部屋の奥に進めば、布団から空を見ている香姫の姿が目に映る。
たった一瞬…
まるで散っていくような儚さを感じた。
「香姫サン」
「喜助さま」
熱のせいでぼんやりとしているのに香姫はにこりと笑い起き上がる。
「お久しぶりです お元気でしたか?」
「ええ、私は元気ッスよ」
喜助はゆっくり確かめるように香姫の元へと歩いていく。
「良かった‥」
香姫は汗だくな顔で小さい頃から変わらないいつもと同じ笑顔で答えた。
喜助はその姿に胸が痛み立ったままグッと拳を握りしめた。
「喜助様…どうされました?」
香姫は驚いて喜助に手を差し出す。その腕が以前より細かったのに気づいた。
喜助は何故今まで放っておいたのだろうか‥と、そんな自分に腹が立つ。
(自分のことには鈍感で他人のことには敏感 意志は強く聡明であるがまだ穢れのない、道をずれてはいけない子 強いけれど脆く、危ない…周りを見て吸収するまだまだ子供だった…一人にしてはいけなかった……)
「あの、会いに来て下さって嬉しいです 今朝から体調が優れず、少し床に伏せているだけです…どうかお気になさらず」
「っ…」
喜助はまだ笑う香姫に膝をついて思いきり抱きしめてあげた。
香姫の体が異様に細いことを知る。それはとても悲しかった。
「喜助様」
「香姫サン…約束しましょう 私と」
「え?」
「生きてください」
先ほどよりギュッと力強く喜助は抱きしめる。
「っ…」
香姫は喜助の想いが伝わってきて、自分の体の緊張が解けてしまい暖かさに温もりを感じながら眠ってしまった。
喜助は香姫を寝かしつけてから、屋敷の外で待っていた護衛長の律に看病を任せて喜助は外へ出て行く。
実は、最初から律だけは敷地から出ていなかった。
紅院の当主からは霊圧が探れない術がある。
それは葵宮の秘方であり、宗家の一子相伝。現在その薬の作り方を知るのは由良と律しかいなかった。
術を解いた今、律は一時的に目が見えなくなる。霊圧を探れるので問題は無いのだが看病出来るか不安であった。
香姫の部屋へと入る。
彼女の前に座りそっと頬に手を伸ばした。
まだ熱がある。それでも触れた先の熱に律は微笑みホッとしていた。