BLEACH 零

□過去(香姫編)
現在(薫、仁、陸人編)
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喜助に言われた「生きろ」の言葉に肩の荷が下りたのか、香姫は今までと同じ自然な振る舞いに戻っていた。
護衛長の律と過ごす一週間は気持ちが楽になるのにちょうど良く、彼の優しい態度に素直に甘える。

律の目が見えていない事に、普段なら気付いたであろうが今回は気付かなかった。





〜香姫の寝室〜



夜明け前、香姫は気配を感じて目を覚ます。体を起こして隣の部屋へと歩き扉を開けた。
部屋の真ん中にはあのオルゴールが置いてあり、曲が流れている。
香姫は少し恐れながらオルゴールを手にとり耳に近づけた。
大好きな曲は前と同じ澄んだ音色で鳴っていた。
ふと香姫の頬に涙がつたう。

あの日、香姫は両親を前にして雨の中ずっと泣いていた。
けれどそれ以降涙を流した日はなかったが、曲を聴きながら寂しいと、単純な想いから涙が溢れる。

寂しい、悲しい、苦しい、そして愛しい……一気に色々な想いが胸を締めつけた。

そして泣き終えてから廊下に続く扉の前まで歩いて行く。

「ありがとうございます…私、母上のような死神になります そしてこれから…生きていきます」
「…」

扉の近くにいた喜助と護衛長はその言葉を聞いて安心して去って行った。

「死神になります…父上、母上…」

香姫はオルゴールを抱えてそう呟いた。

その日決心した理由の一つに、喜助の為に役に立ちたいという想いがあった。

『これから……の為に…生きていきます』

翌年の春、香姫は真央霊術院に合格し通い始める。
そして白哉、夜一、喜助ともまだその頃は会っていた。

香姫の霊力は高く、斬拳走鬼の中でも苦手なものがなかったので飛び級する。

その頃、護廷十三隊十二番隊の隊長に喜助が就任し香姫も一緒にお祝いした。
しかし、その後で喜助は尸魂界を追放され一緒に夜一まで居なくなってしまう。

香姫はそのことで心配していたが、今度は白哉や護衛衆の支えが心強くいつも通り過ごしていた。

そして、このまま死神になり護廷十三隊に入るべきか鬼道衆に入るか迷い続ける。

香姫がその日も白哉の所へ行こうと家を出ようとすると、玄関を出てすぐの桜の木にくくりつけてある紐に気付いて足を止めた。

紐はビンをくくりつけていて中には喜助からの手紙が入っていた。
内容は一言。

「またね」

香姫はその手紙をソッと握りしめて、その場でうずくまり静かに泣いた。





―――次の日の朝


また一通の手紙が届く。

驚くことに手紙は王族からで零番隊の存在が書いてあった。

読み終えてすぐに香姫は決意する。

半分は親の死因の真相をつかむためだが、もう半分は護廷十三隊や鬼道衆より自分には合っていると思ったからだ。

そうして真央霊術院を卒業後、直ぐに零番隊第三席という立場で配属する。




『過去(香姫編)』





fin
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