SEED

□風にのって
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青い空、白い雲



ありきたりな風景を



変えていく君の旋律










『風にのって』





〜イザークの家〜



「ラクス!!」

 イザークはザクザクと少し大股で庭を歩き、大声で彼女の名を呼んだ。

 庭の芝生に仰向けになり、両手をお腹の上に合わせていたラクスは名前を呼ばれてパチリと目を開ける。

「そこで何をしている」

 ラクスの横にたどり着いたイザークは少し息が荒く、額はうっすら汗ばんでいた。

息を整えながら片方の髪を耳にかけて呆れた顔をしてイザークは尋ねる。

 しかしラクスはそんなイザークに体を起こして座り直して「こんにちは」と、にこりと微笑んで挨拶をした。

「今日はいい天気ですわね。日差しが少し眩しいですけれど、そよ風が心地よいですわ」

「なぜ家に入って来ないで庭で寝ているんだ!」

「先ほど門の前までアスランに送って頂きましたの。そこからお庭を歩いていましたら帽子が風で飛んでいってしまって、追いかけましたの。そうしましたらこちらにたどり着きました」

「で?」

「こちらは木陰になっていて涼しくて思わず空を見上げましたら、ほら。枝と枝の間から青い空が見えますでしょう? その光景があまりに綺麗でしたので気がつきましたら寝転がっていましたわ」

 ラクスはふふふっと笑いながら説明した。

「ったく、俺の家の者達はお前を必死で探していたんだぞ。……まあいい、家にいたのなら問題はないな」

 イザークは別に怒ってはいないが、嫌みたっぷりな説教のような口調だった。

 携帯を取り出して使用人に「ラクスを庭で見つけた、すまなかった」とそれだけ伝えた。

「あのイザークごめんなさい。そんなことになっていたとは思いませんでしたわ」

「いやいい、それよりここは本当に涼しいな」

「ええ、本当に」

 ラクスがあまりに嬉しそうに微笑むので、イザークもつられて気分がよくなった。

 ラクスの隣に座りイザークも寝転ぶ。

「あらあら」

 ラクスはザークの方へと驚いた顔を向ける。

「何だ?」

「いえ、イザークはそういうことはしない方だと思っていましたわ」

「ああ ラクスが隣にいなければしない」

「まあ、甘えんぼさんですわね」

「誰がっ!!」

 イザークは瞬時に体を起こしてラクスと視線を合わす。

「私も甘えんぼさんですわ。イザークのお隣が大好きですもの」

「!……フン」

 イザークは少し照れた顔をして立ち上がり、ラクスへ片方の手を伸ばした。

「行くぞ」

「はい」

 ラクスはその手を取って立ち上がり、帽子は脱いで逆の手に持つ。

 イザークと触れ合った手は繋いだまま二人は庭を歩いた。

「ふふ」

「何だ?」

「イザークとここのお庭を歩くのは、何度目でしょうか?」

「は?」

 イザークは今更何だコイツは?というような目でラクスを見る。

「日数を数えたことはありませんけれど、もう数え切れないほど歩きましたわね。これから先もずっとイザークとお庭を散歩するのだろうと思うと楽しみで思わず笑顔になりますわ」

「っ、くだらん! いちいち当たり前のことを言うなっ」

 イザークは無邪気に笑うラクスの笑顔が嬉しかったのだが素直になれず、ラクスより一歩前を歩く。

「(当たり前……)ええ、そうですわね」

 ラクスはぶっきらぼうなイザークの一言だったが嬉しくなり、イザークの後ろをクスクス笑いながらついて行った。




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