SEED

□守りたい人
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あの頃の約束を…

覚えているのだろうか?



『守りたい人』





―――6歳ぐらいの頃


〜ジュール邸〜



「ふふ」

 ラクスは車の中で待つように言われたが、我慢が出来ずに車から降りて散歩に出かけた。

「きれいなお庭ですわ〜」

 うっとりとしながらラクスは奥へ奥へと歩いて行く。


「白いばら……?」

 白いばらに手を伸ばそうとした時、左端からチラッと動く物体を発見した。

「!」

 ラクスは動く物体の方をのぞき込むが誰もいない。

 テクテクと物体を探しにさらに奧へと歩き始めた。

「?」

「おい、だれだおまえ」

「あら?」

 ラクスは突然現れた目の前の自分と同じぐらいの子にビックリした。

「?」

その子はジッとラクスを見る。

「わたくしはラクス・クラインですわ。はじめまして」

 綺麗にお辞儀をした後、ふんわりと笑うラクス。

「オレはイザーク・ジュールだ。ここで何をしている」

 怪訝そうに言い放つイザーク。

「おさんぽですわ」

「オレの庭で?」

「まぁ! イザークさまのおにわですの?」

 嬉しそうに両手を合わせるラクス。


「ああ……」

 腕を組んでどこか怪しい奴だなとイザークは思った。

「ほんとうにキレイですわね?」

「……まあな。しようにんたちがまいにち世話をしているからな」

 横にあった赤いバラを軽く触るイザーク。

「そうですか。ところでイザークさまはなぜここに?」

「ここはしずかだし、本をよむのにさいてきだ」

「ふふっすてきですわ」

 首を傾げて笑うラクス。

(オレはなんでこんな女に…)

 イザークは初対面の人物に自分のことをペラペラと話すことにビックリしていた。

「イザークさま?」

「いい……イザークでいい」

「あら? でしたら、わたくしのこともラクスとおよびくださいな」

ニコッと笑うラクス。

「ラクス」

 思わずイザークがそうつぶやいた。

「はい?」

「べつによんでない!」

「あらあら?」

「……」

 少し恥ずかしくなるイザーク。

「さきほどから、イザークのかみが風になびいて、すてきですわね」

 いつの間にか近くに来ていたラクスがイザークの髪をなでなでする。

「なっ!!」

 イザークはビックリするあまり固まった。

「サラサラですわ〜」

 ラクスはそんなイザークをお構いなしに、髪をなでなでする。

(なんだこの女!?)

 イザークはそれでも何も言えずにされるがままだった。




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