BLEACH 零

□点と線
1ページ/14ページ



あの日誓った想い…




『点と線』



庭で香姫の手に口付けた男との無言の見つめ合いを、三人は黙って見ていた。

先に声を出したのは長身の男の方である。
彼の言葉に香姫が何かを話し、周りにいた護衛衆にも声をかけるとそれぞれが屋敷の奥へと歩いて行った。

香姫も三人の方へ歩いてきて、こちらへどうぞと玄関の戸を素通りして奥へと案内する。
その後ろを先ほどまで長く見つめ合っていた長身の男一人だけがついて来た。

角を曲がると広大な庭の真ん中に毛氈が敷いてありそこに野点傘と椅子も置いてあった。屋敷は外で見た以上に広そうである。

こちらから屋敷を見ると、庭側の障子が全て開けてあり中は畳しか見えなかった。

靴を脱いで用意されてある椅子に、屋敷を背にして三人は一列に座る。

香姫は一人で向かいの椅子に座った。その斜め後ろに彼が地面に立っている。

「見事な桜ですね」

薫が庭の桜を見てそう言うと香姫はとても嬉しそうに笑った。

「自慢の桜です これを観て欲しくてここにお呼びしました 三人ともようこそ ここが私の家です」

三人は後ろに咲く桜と彼女があまりに絵になるような姿に息をのむ。

「屋敷の中を本当はご案内したいのですが、女性をお連れしたことがありません もし仁に何かあっては困りますので、ここでお許し下さいね」

ここの景色で十分ですと仁が言った。

「先程いたのは全員私の護衛です 今は奥の別邸で生活しているので、顔を見に出てきたみたいですね」

照れたように笑う香姫に三人は納得した。自分達だって会えない時はどれほど心配していたかと言いたい所だが我慢する。

自分達が歩いてきた玄関先の方から少し白髪混じりの大男が歩いて来てお茶とお茶菓子を運んできた。
先ほどの男も近付いて来て手伝い、そして二人は靴を履き地面に並ぶ。

「今回の闘いで私は護廷の零番隊隊長として、そして紅院家当主としても闘います ですから、この二人とは今後顔を合わせる機会も多くなるかと思いますので先にご紹介します 護衛長の葵宮律と、副長の葵宮ナツです」

二人が丁寧に頭を下げた。
たったそれだけなのにどこか品があるのを三人とも感じる。

「初めまして 副隊長の紫堂薫です」
「第三席 樋崎仁です」
「園峰陸人です」

三人それぞれ挨拶すると香姫が立ち上がった。

「これで顔合わせはおしまいですね ナツはこの家の料理長も勤めていて、私の料理の先生なの とっても美味しいので夕食は楽しみにしていて下さいね」
「へぇ」

一番厨房を手伝う陸人が飯と聞いて反応する。するとナツと目が合い、直感でこいつはかなり強い奴だなと分かった。

「三人とも少しだけこの場でゆっくりしていただけますか 一度部屋へ戻りますので…」

そうして玄関へと回る香姫の後を、二人もついて行く。

陸人は目の前の茶をすすりお茶菓子を手でとりそのまま口へと放り込んだ。
その姿に仁が怪訝な目を向けるが、陸人は気にせず立ち上がり庭から見える屋敷の大広間の方へ歩く。

「副隊長の言う通り綺麗な桜ですね」
「ああ こうして見るのもいいものだな」
「そうですね」

二人は和やかに話している中、陸人は畳しかない広間の床の間に飾ってある花に見覚えがある気がして、何だったかなと思っていると、仁から呼び出されてまた椅子のある場所へ戻った。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ