BLEACH 零

□白
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混ざり合ったモノ…



重なり合うモノ…




「白」




朝になり香姫は目を覚まして起き上がる。おそらく今までで一番寝起きが良かった。
そうして寝巻きの上から羽織りを着て隣の部屋へ行く。

いつもの一人がけソファに座り彼を待った。
日課である朝の紅茶を頂く。

律は朝から厳しい顔をする香姫に、おはようございますと挨拶するだけで他には一言も話さなかった。

飲み終えたカップを受け取り部屋を出て行く。香姫はそのまま下の階に降りて一人で朝食を済ませた。

香姫が家にいた頃とここまではいつもと同じである。

そうして寝室に戻った香姫は正装を身に纏い、紅院家の羽織りを着て化粧をした。
最後に首にあのネックレスをつけ、鏡台の引き出しにしまったガラスのオルゴールを出して螺子を巻く。

その曲が終わるまで目を瞑り聞いていた。直してもらったあの日以来、実は一度も聞けなかったこの曲を香姫は聴いていると両親との楽しい思い出が蘇った。

曲が終わってもそのオルゴールは鏡台の上に出したままにする。
そうして彼女は部屋を出た。

廊下には常に護衛衆の制服を身につけている律も、普段は動きにくいからと使わない外套を身につけている。

そこで今日初めて彼と目を合わせた。

彼は何も言わずに頭を深く下げる。
そうして香姫は彼の横を素通りして階段を降りていった。

三階、儀式の間

そこまで来て香姫は襖の前で立膝をついて頭を下げる副長のナツの横まで行き立ち止まる。
そこで香姫は立ち止まったままだ。

ナツは頭を下げたまま合図を待つ。
香姫が覚悟を決めて腰に差していた斬魄刀に手をかけた。

それを合図にナツが襖を開けて中へ香姫が入る。
襖を閉じて別の入り口から律とナツも儀式の間へ入った。

中には護衛全員と葵宮幹部が全員立膝をつき頭を下げている。

香姫は一段高い座敷に上がり真ん中に立った。
彼女は真っ直ぐ前を向き斬魂刀を鞘から取り出して自分の人差し指を斬ってその血で唇に化粧を施す。

その瞬間、何とも言えない感覚が部屋中を覆った。

「二十七代目紅院家当主 香姫が命じる 我を阻む全てのものを殲滅せよ 我は封印を成し遂げる」

澄んだ声が部屋中に響く。
たった一言だったがそれぞれが香姫の言葉に拳を強く握りしめた。

斬魄刀を納めるキンっと鳴り響く音の後、下を向いていた全員から力が湧く。
部屋中に熱気が伝わり、皆それぞれの気が高まった。

香姫は座敷から降りて皆と同じ段で正座をする。

「皆さん 顔を上げて下さい」

香姫の言葉に護衛衆や端にいた葵宮家も顔が固く真剣な眼差しで彼女を見つめた。

皆が息を飲む中、香姫はにこりと笑った。

「我は其を想い 其の力は我を護り 我の力は紅の為に 紅の力は其の為に 永遠に続く紅の為に 我の血よ永久に地の中へ 地の力は紅の為に 紅の力は其の為に」

昔から伝わる書を歌いあげる彼女を見ながら、全員が彼女との最初の儀式を思い出す。

「二十七代目紅院家当主 香姫 命ある限り其を護ります」

あの日と全く同じ事を香姫は言った。
その姿に皆が息を呑む。

あの当時、まだ学院にも通っていない幼い彼女が当主として立派に振る舞う姿に驚いていたのに、儀式を終えた後、自分達と同じ視線に立って今のように笑いかけて自分達を護ると言い切った。
その香姫の優しさに胸が熱くなり、瑞姫や仲間を無くした悲しみは薄れ、新当主に揺るぎない忠誠を心に深く誓ったのをはっきり覚えている。

「皆に誓ったあの日から私の想いは変わりません 今回の件が済めばここへ戻ります ですから、皆も必ずここへ 全員ここへ戻って来て下さい 一人でも欠ける事を許しません」

彼女の声は少し震え、両手を胸の間で握りしめて皆に縋るように言った。

彼女の言葉に律が口をひらく。

「我々一同 当主の命を必ず遂行致します」

彼の声は部屋中に響いた。
そうして全員が香姫に向けて頭を下げる。

「はい」

そう返事をした香姫が部屋を出て行った。

決戦の日は明日。
皆が各々の準備を始めた。

すでに護廷十三隊は瀞霊廷の中を護ることが決定している。
零番隊と紅院家率いる護衛衆が麗奈率いる本隊のある流魂街へ突入することが決まっていた。



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