BLEACH 零
□覚悟
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光あれば影があり…
『覚悟』
香姫と浦原が公園から家に帰る途中、寝そべっている陸人を見つけて香姫が側に寄り声をかける。
「陸人 起きて下さい、陸人…」
寝ている陸人の肩を軽く叩き、膝を曲げて覗き込む香姫。
「んあ、姫?……ふああ」
陸人は目を開けて、大きな欠伸をしながら体を起こした。
「起きましたか?」
「あ、ああ…なんか用?」
陸人はん〜ッと背伸びをしながら尋ねる。
「帰る途中に陸人を見かけまして起こしにきました」
「あっそ」
「肌寒くなってきましたしこんな所で寝ていては風邪をひかれますよ? 私たちと一緒に帰りましょう」
香姫は陸人の腕に触れて立つように引っ張るので、土手の上で待つ喜助に警戒していた陸人も結局は素直に従った。
それが少し歯がゆい。
「聞いて下さい陸人! 私、ユーフォーキャッチャーという現世のゲームが得意みたいです ほら、見て下さい!!」
そう言って自分の横の下に置いてあった袋を両手に持ちあげて笑みを浮かべた。
あまりに間抜けな顔に陸人も思わず微笑する。
「これ全部か?」
「はい、私がユーフォーキャッチャーで頂いた商品です」
香姫は目立つように高く袋をあげた。
「くっ、ははっ…良かったな……あ、なぁ?…他にはどっか行ったのか?」
可笑しそうに笑いながらも陸人は優しく尋ねた。
「カフェでとても美味しい紅茶とケーキを頂きました それに洋服を買って頂きました!」
嬉しそうに話す香姫に陸人は不思議な感覚を感じて話しを遮る。
「姫、何かあったか?」
「え?…」
「目が赤い どうした」
「これは…喜助様とお会いできて嬉しくて泣いてしまいました いつも陸人はすぐ気がつきますね」
「別に…(オレは姫が好きだから…)」
「ふふっ、帰りましょうか」
香姫は嬉しそうに微笑んだ後、土手を上がろうとするが陸人は持つと、ぶっきらぼうに言いのけて香姫の袋を引っ張った。
「でも‥「貸せって」
陸人はまた強く袋を引っ張る。
「半分お願いしますね」
香姫は仕方なくそう言って笑った。
「これぐらい 別に…(姫のためなら…)」
彼女と歩く二人の時間が陸人は何よりも好きである。
ただ、土手の上で待つあいつだけは絶対好きになれねぇと思った。
陸人は敵意を剥き出しにしたまま香姫を護るように浦原の横に立つ。
「薫と仁はどちらに?」
「知らん 途中までは一緒だった」
陸人は横の喜助を気にしながら話した。
「そう…何だか現世に来てから霊圧の感知が掴みにくくて、身体が鈍ってしまったのでしょうか」
「姫はこっちに来てからずっとか?」
「はい」
じろりと反対側にいる喜助を睨みつける陸人。
「! 何スかぁ〜?」
「チッ」
扇子を広げてニヤッと笑う喜助に陸人は嫌みったらしく舌打ちをした。
「あっあの、喜助様? 喜助様の所には四人で一緒に住んでいると伺いましたが、本日三人はどちらに?…」
「あ〜、テッサイ達は一護さんの所ッス」
「苺さん…(女性かしら?)」
「なんなら会いに行きます?」
「はい、宜しければ」
「じゃ、こっちッス」
(? 何で姫はうろたえてんだ?)
陸人はただの勘であったがそれは当たっていて、香姫は胸をどきどきさせながら歩いていた。