BLEACH 零

□花明かり
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夜に桜は色を足し



人の心を惑わせる




『花明かり』



死覇装では目立つからと香姫に言われて全員私服で紅院の屋敷へ向かっていた。

瀞霊廷の中だが、民家や商店、隊舎がある場所よりも山奥に進んだところに塀で囲まれた場所がある。
三人はそこを見るのも始めての場所だった。

仰々しい大きな門があるものの、見張りは無く開放されているのでそのまま中へと進む。
塀の中には民家が並んで建っており、人々も普通に生活をしていた。

「何だよ…中はただの家か」
「あの塀や門からは想像出来ませんよね でも、皆さんきっと驚きますよ ここにある全ての家は同じ一族です」
「あぁ?」
「紅院の家を支えてきた葵宮一族とその分家の方々しか此処にはおりません」
「まぢかよ、すっげえな」
「はい 私も聞かされた時には驚きました」

ふふっと笑う香姫と引き換えに、三人は目を丸くして周りを見渡す。
香姫は香姫でなぜか辺りを見回して、誰一人近くに寄って来ないことに不思議になっていた。

「あのそれで姫の家はどちらに?」
「私の家は一番奥です」

にっこり笑う香姫。

門を抜けてから一直線に歩き続けた四人は、川が流れる所まで来た。
橋を渡り終えた先には民家は一つも無く、川と平行に立つ大きな塀と門とその前に人影が見える。
今回の門は閉まっており、その門の前には三人いた。

門に香姫が近付くと全員が一斉に立て膝をつき頭を下げる。

白髪混じりの男の前に香姫は近付いて左手を差し出した。
男も自然にその手を取り軽く口づけをする。そして優しく微笑みながら立ち上がった。

「香姫様 お待ちしておりました」
「由良様が此方にいらっしゃるとは思いませんでした お変わりないようで安心致しました」
「いえ、私共こそ今回お役に立てることを嬉しく思っております」

男は香姫を見ながら声が震える。隣にいた男達も立ち上がり、彼等は門の横にそれぞれついたが、香姫をジッと見つめている。

「由良様…」

由良と呼ばれた男は一度咳払いをして背筋を伸ばす。

「香姫様 後ろの方々がご友人ですか」
「はい」
「皆に顔を覚えておくように伝えておきます」
「では、町の方々には由良様が何か仰いましたの?」
「騒がれては困るだろうと近付かないよう伝えましたが、香姫様には逆効果のようですね 直ぐに撤回させます」
「いいえ、私の方こそ変に気を遣わせてしまって申し訳ありません ありがとうございます」
「とんでもない こちらの準備は出来ております 上へどうぞお進み下さい」
「由良様 またあとで」
「はっ」

由良は返事の後、見張り達に合図をして門を開かせた。四人はその門を通り抜け、すぐある階段を上り始める。
階段のある部分以外は林になっており、頂上には大きな屋敷が見えた。

あれが姫の家なのだろうとみんなは確信しつつ、三人は遥か昔に隔離されていたという話しを思い出した。




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