黒子のバスケ

□彼奴から奪うから…
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『彼奴から奪うから』



「テツ!」
「青峰くん!」

ベンチに座る黄瀬はタオルで汗を拭きながらぼんやりと黒子を見つめていた。
二人が拳を合わせる姿に胸が痛むようになったのはいつからだろう…と、試合中なのにそんな事を考える。

その日も公式試合に帝光中学は勝利しミーティングを終えて解散した。
青峰と黒子、黄瀬、紫原がコンビニに一緒に向かう。

「テツ、明日アレ貸してくんねー?」
「この前貸した辞書なら君が持ったままですけど」

ジロリと睨みつける黒子に青峰はワリィと笑って謝る。

「黒ちんと峰ちんってー、バスケ以外合わないとか言うけどそうでもないよねー」

ボリボリお菓子を食べながら紫原が言った。その言葉に黄瀬の体はピクっと反応する。

そうでしょうか?と、黒子が後ろに振り返って紫原を見た。

「だって〜、黒ちんだけでしょー峰ちんのアレとかソレとかで分かるのー」
「それは、文章の文脈から推測しているだけです 青峰くん単純ですから」
「オイ、何だその言い方」

青峰は黒子の言い方に詰め寄るが、紫原は首を横に傾げて続ける。

「えー?でも黒ちん以外は分からないよー」
「赤司っちや緑間っちも分かるじゃないっスか!」

黄瀬がそう言うと紫原はそうかもーと、一人頷いてまたお菓子を食べ始めた。

「オイ、オレはそんな単純な男じゃねーぞ」
「毎週月曜日に辞書を借りにくるので覚えただけですよ 全く、君の辞書はどこにあるんですか?」
「さあな、ま、テツの借り行くからいいよ」

ニッと笑う青峰に黒子は脇腹を殴る。

「僕が良くないです」
「テツ、てめっ…」
「黒子っち! オレならいつでも貸すっスよ!」
「いえ、遠慮します」

お腹を抑えてよろける青峰を他所に黒子は即答で答えた。

「え!? 何でっスか?」
「黄瀬くんの教室遠いですし、周りにいつも誰かいて呼びにくいです 借りるなら紫原くんか緑間くんにします」
「えー?やだ〜〜、あっでもー、お菓子くれるならいいよー」

紫原がにっこり笑って、それ言いかもーと黒子の頭に手を乗せて撫でる。

「紫原くん お菓子食べていた手じゃないですよね」
「うん、ちがうー赤ちんに怒られたからー」

少しホッとしつつ、撫でるのやめて下さいと腕を掴もうとすると紫原が手を引っ込めた。
すると横から青峰が黒子の肩を抱く。

「テツ、やっぱりオレだろ 緑間だと小言言われんぞ」
「はい 予想はしていますが、君が持っている可能性のほうが低いと思いますから」
「オレのロッカーに無いものは無いぜ」

どや顔で言う青峰に黒子はため息をついて、なら自分の物を使えば言いじゃないですかと呆れながら言えば、見つけるより借りた方が早いと彼は言った。

そんなやり取りが続く中、目的地のコンビニに着くと紫原は買いたい物だけ買ってさっさと帰ってしまう。
黒子、青峰、黄瀬は肉まんを外で食べ始めた。




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