黒子のバスケ

□こんなにも溺れていたなんて
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君の隣は


心地いい






『こんなにも溺れていたなんて』



帝光中学校 教室



噂の彼が入って来て女子たちがざわめく。
その人物はひらひら手を女子たちに振りながら、教室を見渡しある人物の前まで来てその彼が読んでいた本の上から部誌を被せた。

「これ」

黒子はいきなり差し出された部誌に驚き見上げれば、持ってくるとは思いもしない人物がいてさらに驚いた。
読んでいた本に手を挟んで閉じ、不機嫌な顔をしている彼から空いている片方の手で部誌を受け取る。

「どうも…あの、黄瀬くん 部誌は部活の時で構わないですよ」
「通りかかったから」
「そうですか」
(はぁ、ほんと見れば見るほどショボいなこいつ)

上から見下ろす黄瀬は、見れば見るほどパッとしない彼に大きく肩を落とした。

「黄瀬くん まだ何か用ですか?」

まだ居続ける彼に部誌を横に置いた黒子は言う。

「ほんと、何であんたみたいな人が一軍なわけ? 信じらんねーっ」
「なるほど その事を言いたくてわざわざ寄ったんですね」
「は?いや、別にオレは文句を言いに来たんじゃなくてさ、まぁ、そりゃ今日の朝練だってさあんたがあそこでミスしなけりゃ終わってたけど それに…」

黒子はまぁその通りだなと思いながら早口でまくしたてるように話す彼を見つめ、長くなりそうだなと小さなため息をついて指で抑えていたページに栞を挟んだ。
黄瀬は気にも止めずひたすら言い続けていたが、突然後ろから頭を叩かれ、手で後頭部を抑えながら振り返る。

「邪魔 ったく、テツも災難だな 部活以外でもこんな奴に絡まれて」

貸していた辞書を手に持つ青峰は、やれやれといった様子で黄瀬を横に押しのけて黒子の席の前の椅子を引き出して座った。

「黄瀬くんは部誌を届けに来てくれたんです」
「は? んなの部活の時でいいだろ 文句を言いに来ただけだろコイツ」

指を差して青峰は呆れた顔をする。そして黒子の机の上に借りた辞書を置いた。

「青峰っちヒドイっス 一応、モデルなんスよ!」
「テツ これサンキュー」
「はい、わざわざありがとうございます」
「無視っスか!?」
「はぁ? まじうるせぇ 用終わったんだろ あっち行け」

しっしっと、動物を追い払うかのように青峰は手を上下に動かす。

「っ、あんまりっス!」
「あー?」
「青峰っちはいっつもいっつも…」

今度は黄瀬と青峰の言い合いが始まってしまい、黒子は2度目のため息をついた。
静かに読書をしたいだけなのに、今日はもう諦めようと机の中に本と部誌を仕舞う。
そして黒板の隣に飾られた時計を見た。

「あの、二人ともそろそろ授業始まりますよ」
「ん、あぁじゃあまたなテツ」
「はい」

教室を二人はいがみ合いながら出て行く。
途端に静かになった教室は二人の影になっていて全く気に留めなかった黒子の存在に気付いて、そこにいたのかとクラスメイトは驚いた。

廊下では、真面目な顔になった青峰に注意される黄瀬。

「お前 テツへの嫌がらせいい加減やめろ」
「嫌がらせなんてしてないっス 本当のことを言ってるだけっス」
「そうか…よっっ」

青峰は黄瀬の胸ぐらを掴んで壁に勢いよく押し当てて「あんま調子に乗んなよ」と言って直ぐに手を放して歩いて行った。
黄瀬は何なんだよと思いながら自分の教室へ入っていく。




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