黒子のバスケ

□毎日言ってあげる
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そんな顔をしないで…





『毎日言ってあげる』





部活中も黄瀬は何であんな奴…と思いつつ、練習には必死に打ち込んでいた。

部活後、教室に忘れ物をした黄瀬は取りに行こうと歩いていると、体育館の裏で何やら声がしたのでふと見れば二軍の先輩達といる黒子の姿が目に入る。

珍しいなと思いつつ黄瀬は教室へと廊下を歩いていた。

「変な空気だった…よな」

黄瀬は一度立ち止まり考えていたが、確かめてからでいいかと思い先ほどの場所へと戻り見つからないように壁の側面からそっと覗く。

先輩達が黒子に怒鳴っている声が聞こえてきて、黄瀬の位置からは黒子の顔は見えずにいた。

「お前みたいな奴が一軍なんてっっ」
「俺には出来ねぇけどな あんな役…」

黄瀬は先輩達の話しを聞きながら、誰でも同じこと思ってんだな。と、軽く頷く。

先輩達は何も言わない黒子に苛立ちが昂ぶったようで「何か言えよ!」と、黒子の腹を殴りつけた。

黒子からは苦しそうな声がして、片手で腹を抑えたまま殴った先輩を見上げて何か言っているようだがそれは聞こえず、ただそれが原因で更に彼を煽ってしまったのは明白でその先輩は顔を赤くさせ立て続けに黒子を殴りつける。

黄瀬は流石にコレはまずいだろ。と思い動こうとした瞬間、後ろから腕を掴まれ思わず「わっ」と声が出た。

するとそれに気付いたのか、先輩達もその場を後に反対側へと足早に去って行く。

黄瀬が振り返るとそこには青峰が居て、彼は小声で「何もするな」とかなり力をこめて握られた腕に黄瀬が「痛いっス」と言うと、青峰も手を放した。

「とっとと帰れ 今日のは忘れろ」

青峰はそう言い立ち去ろうとする。黄瀬は黒子の元に行くわけでもない青峰に不思議に思った。

(青峰っちなら駆け付けて先輩方殴り倒しそうなのに…つーか慣れてる?初めてじゃないってことか、でも、それじゃ…)

黄瀬は青峰に駆け寄る。

「何で、助けねぇの」
「お前には分からねぇよ テツは俺の相棒で、誰よりもアイツのことはオレが分かってる」
「何スかそれ…オレは放っておかないっスよ あんな「はぁ? 何言ってんだ 助ける気なんてねえだろーが」
「そんなことないっス」
「はっ、どうだか とにかくこれからああいうの見つけても何もすんなよ」

青峰はそのまま去り、黄瀬はかなりムシャクシャしながら教室まで急ぐ。課題のノートを鞄に入れて昇降口へ向かった。

人影が見えたのでバスケ部の誰かだなと思い近寄って見れば、そこでは青峰が後ろから黒子を抱きしめている光景が見え、黄瀬は思わず隠れてしまう。

普段から仲の良い二人なのでその光景もよく見ていて変なことではないはずなのに、何故か胸がざわついた。

そして、そのまま歩いて行けば良かったのに今更出ずらくなり足元の上履きを見て諦めて二人が出て行かないかとそっと覗いて見る。

「また派手にやられたな」
「そうですね」
「あの野郎共オレのテツを傷つけやがって」
「その気持ちだけで十分ですよ さ、帰りましょう」
「はぁ、オレのテツ…」

ため息まじりに黒子の頭に頬を乗せてギュッと抱きしめる青峰。
そんな彼の腕をそっと触れて黒子は微笑んだ。

二人のやり取りを終始見ていた黄瀬は黒子の初めて見る顔に動悸がする。

「テツ…」

首筋を舐める青峰に黒子はビクッと体が反応して彼の脇腹に肘打ちして離れた。

「っぐ…」
「学校では止めて下さいと何度も言っているでしょう」
「んなの、テツが悪いんだろ 傷ばっか作るから気にして抱けねえし」
「青峰くん!」

顔を真っ赤にする黒子に青峰は笑いながら「帰ろうぜ」と言って、頭を撫でる。
渋々納得する黒子。

二人が出て行った後、黄瀬は黒子の笑った顔や照れた顔に胸がざわつきその場に座り込んで、ある感情に気付かないように「あり得ない」と何度も心の中で唱えた。




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