黒子のバスケ

□テリヤキバーガー
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『テリヤキバーガー』




目が覚めて大欠伸をしてから部屋から出た。

すると、ちょうどドアを開けようとしていた人物と目が合う。

「おはようございます」
「はよ…」
「僕はもう出ますよ」
「おぅ…いってら」

そう言って青峰は盛大にあくびをしながらリビングのソファに腰掛けた。
ぼんやりと玄関の方を向いて黒子が出て行くのを見つめ、鍵が閉まる音を聞いて顔を正面に向ける。

目の前にあるテーブルには焼いたパンと牛乳、目玉焼きが用意されてあり、青峰はそれを食べ始めた。

合格出来たのが嘘のような話しだが、今青峰はアメリカの大学に通っている。
高校時代成績は常に最下位、英語何て以ての外だったが人間やれば何とかなるものだ。

今じゃ大学の授業のギリギリ合格ラインを滑り込んでいる。

バスケだけしていられれば幸せなのにと時々嫌気がさすが、それでも不貞腐れないでいられるのはNCAA T部の大学でバスケをしているからだ。

どんなプレイも面白くて仕方がない。
黒子とは一緒にプレーする事は殆ど無いが、彼は何時間も練習に付き合ってくれるしこうしてご飯も用意してくれて助かるばかりだ。

ここ数日合宿でこの部屋にいなかったので余計に感じるのかもしれない。

青峰がその日大学から帰宅すると、キッチンにいる黒子の姿を見てどこかホッとした。

匂いでわかる。
自分の好きな照り焼き風チキンステーキだ。
良い香りに腹が鳴り、フライパンを手にしている黒子の後ろから抱きつく。

「お帰りなさい青峰くん 邪魔だから離れてて下さい」
「! お前…そりゃねーだろ」
「あのですね、腕が使えないと動きにくいんです 隣に居てもいいから離れて下さい」
「…チッ」

青峰は舌打ちして離れた。
黒子の言う通りに隣に並ぶ。

「ふふ 君の好きなものを一生懸命作っていますからもう少し良い子で待っていてください」
「子供扱いすんなよ」
「こんな大きな子供嫌ですよ」
「…なぁテツは大学卒業したら日本に戻るのか?」
「…そうですね 一応そのつもりです」
「ふーん」
「……さ、出来ましたよ 食べましょう」

黒子は焼き色を確認して、フライパンの火を止めた。
お皿に盛ってテーブルに置く。

二人の部屋は靴のままで良いのだが、二人ともそれが気持ち悪くて靴を玄関マットのあるところで脱ぐ決まりになっていた。

ソファ前のローテーブルの前で床に座り手を合わせていただきますと言って食事をとり始める。

「うっめえ 本当にコレ好きだわ」
「…それは良かった 久々に君と食事が出来るので張り切って良かったです 長い間、お疲れ様でした どうでしたか?」
「最高」

ニヤッと笑う青峰に黒子も嬉しそうに笑った。

「僕もこっちの大学を選んで良かったです」
「俺と居られるから?」
「はい」

にこりと笑う黒子に青峰は妙に素直だなと驚く。

「機嫌良いじゃん」
「上手く出来ましたから」

そう言って黒子は自分の作ったチキンを口に運んだ。

「あ、そーだ テツが見たがってた映画メンバーから借りてきた 後で見るか?」
「! 良いですね」

二人はたわい無い話しをしながら笑い合う。

青峰が食べ終えて、腹一杯だとソファに横になった。
黒子は立ち上がり皿を食洗機に入れ始める。
青峰の耳には鼻声が聴こえて来た。

合宿から帰ってきた後の彼はいつも機嫌が良い。
言わないけれど青峰はなんだかそれが可愛くて黙っていた。

今日はこの後映画を見ながらイチャイチャして、そのままテツを抱こうと思っていたのに青峰が次に目を覚ました時には外から差し込む光は日明るく、朝だと分かる。

慌てて起き上がると毛布がかけてあって、青峰はそれをソファに放置したままベッドのある部屋の扉をそっと開けた。

黒子がいつも寝ているベッドは空で、青峰はおかしいなとリビングへ戻る。

戻ってソファに座り携帯を開いた。
黒子からの連絡は無い。
大学に行くのにもまだ早いはずだが、何かあったのだろうかと青峰は思わず電話をかける。
意外にも黒子はすぐに出た。

「おはようございます青峰くん」
「おう で、テツどこいんの?」
「空港です」
「へえ…、は? 空港?」

青峰は一気に目が覚めて声が大きくなる。

「一度日本に帰ります 家賃の支払いは済ませてありますからちゃんと授業受けて下さいよ じゃあまた」
「あ、ああ…」

青峰は携帯が切れた後でも訳がわからなくて呆然としていた。

昨日上機嫌だった彼は何だったのだろうか。青峰はクソっと言ってソファに座り込んだ。



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