SEED BL
□息もできないほどに
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『息もできないほどに』
何度目かの二人だけの食事でキラさんは言った。
「シンの事もっと詳しく知りたいなって思って」
「は!?」
「これからきっと一番一緒にいる時間が長いだろうから知っておきたいなって思ったんだ」
「あっあぁそういう」
「うん。それにシンは僕の事アスランから聞いているかもしれないけど軍できちんと訓練を受けてきたわけじゃないからもっとこうした方がいいとかあれば遠慮なく言ってほしい」
「……アスランからは何も聞いてません」
「あぁそうなんだ」
俺はからあげをフォークで刺して口に入れて咬み始めた。
キラさんもとくに気にせず食事を続ける。
一緒に行動するようになって徐々に分かったけど、この人生活力がゼロに等しい。
髪がハネているのは日常茶飯事で、制服はクリーニングに出すからまだいいけど休日着る服なんてあるものを着るってだけで新しい服を買ってくる所なんて見たこと無かった。
休みの日も制服を着てるか着てないかの違いだけで昼夜問わず色んな時間でドッグやモニタールームで作業しているのを見かけるのでいつ寝ているのかすら分からない。
一番の問題は忙しくなればなるほどまともに食事をとらないので時間が合えば誘うことにしていた。
最初こそ緊張していたものの、今では普通に過ごせている気がする。
「キラさんって少食ですよね」
「えっ?そうかな?」
「はい。もっと食べた方がいいですよ」
俺は自分が注文したからあげのお皿をキラさんの近くへと置いた。
「じゃあもらうよ」
ありがとうと言ってからあげを一つ口に入れて食べるキラさんを見ながらどこかホッとする自分がいる。
ただすぐにそのからあげのお皿は俺の前へと戻された。
じっとキラさんを見ていると「どうしたの?」と言われる。
「いえべつに」
「シンはよく食べるよね。見てて気持ちがいいよ」
「俺ぐらいの年なら普通じゃないですか?てか、キラさんとだって二つしか違わないんですよ」
「そうかもね。でもシンって本当においしそうに食べるし話も面白いし一緒にご飯食べるの楽しいよ」
にこっと柔らかく笑った後、キラさんは飲み物に手を伸ばした。
俺はなぜかストローに口付けた唇と後ろで動く喉仏をボーっと見つめ、ストローから口が離れて我に返る。
?
キラさんが好きな食べ物や趣味は何?など当たり障りない質問を何個かしてきて俺はそれに答えていた。
ん……、んん?
さっきからキラさんを見ていると胸の鼓動がおかしいことに気付いて落ち着かない。
急に緊張してきた俺はバレないようにといつもよりハイペースでご飯を食べていた。
「もう少しゆっくり食べたら?僕デザート頼むからさ」
キラさんは自分が食べ終わったから急いで食べていると勘違いしたらしい。
食事を終えて船に戻った俺達は途中で別れてそれぞれ自室へと戻った。
シャワーを浴びながら俺はキラさんとの会話を思い出す。
俺といると楽しい……か。
口元がすっげーニヤけているのが分かる。
元々尊敬している人だからここまでは普通なことだ。
問題はこの後、ふと見続けた唇と喉仏、ふわふわした髪、俺に向けた笑顔に下半身が反応する。
いやいやいやいや。
そう思いつつ固くなったソレを俺は握った。
シャワールームを出た後、天使みたいなあの人の笑顔を思い出して自分の欲望に自己嫌悪する。
まぁそれも眠ってしまえば忘れて、翌日から好きだということを自覚した俺は前より一層キラさんを目で追うようになった。