SEED BL

□視線の先は
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※アスランやシンともキラは肉体関係あります

※少しキラは病んでいます

苦手な方はご遠慮下さい









『視線の先は』




 ビーーー

 キラの執務室兼私室の扉の音が鳴る。

 ベッドで眠っているキラはその音はもちろん聞こえているがぴくりとも動こうとしなかった。

 コンコンと扉を叩く音がして数秒後、鍵のかかっていない扉が開く。

「入るぞ」

 その声にようやく反応してキラは目を開けた。

 慌てて起きてベッドの外へと足を出して座る。

 入って来た人物はソファやデスクがある所を通り抜けて、ベッドのある奥まで進んで来るのがコツコツと響く足音でキラには分かった。

 もう着替える時間は無いなと思って諦めたところでキラは彼を視認する。

 その男はとくに気にすることなくTシャツに頭がボサボサでまさに今起きたというキラの目の前で立ち止まった。

「キラ・ヤマト」

「はっはい!」

 その声に反応してキラが見上げる。

 いつ見ても真っ直ぐ整っている綺麗な銀髪がサラリと揺れた。

 その揺れを密かにキラはいつもつい見てしまう。

「今日の午前予定していたジュール隊との実技シュミレーションを午後に変更してもらえないか」

「えっ?あっ、はい。大丈夫です」

「助かる」

「あっ、はい」

「以上だ。邪魔したな」

「え?……」

 そうして奥の方で扉が閉まる音がしてキラは今の夢じゃないよね?とぼんやりと座りながら思っていた。

 とりあえず立ち上がりキラが服を着替え終えた所でシャワールームからアスランが出てくる。

 キラは思わず目を丸くさせて驚いてしまった。

「おはようキラ」

「お、おはようアスラン……」

「誰か来ていたな。こんな朝早くから誰だ?」

「え?あっいや僕まだ寝てて、返事しなかったから中には入って来なかったよ」

「そうか」

 とくに気にした様子もなくアスランは濡れた髪をタオルで拭きながらソファのある方へと移動して座る。

 そのソファの上にはアスランが使っている鞄、テーブルの上にはパソコンが置かれたままでキラはそれを見て一度目を閉じた。

(…………イザークさんが邪魔したなって言ったのって……いや、でもこれを見て僕と彼がどういう関係かなんて普通は思わないよ。久々に会った友達が泊まりに来ることなんて普通のことだし……)

「キラ?大丈夫か?」

「あ、うん。ちょっと頭が痛かっただけ」

 キラが困ったように笑うとアスランがソファから立ち上がりキラの前へと移動する。

「この場所で無理してないか?ただでさえお前は書類作成や会議とか得意じゃないんだからさ。俺が来る度に細くなっているし……」

 アスランがそう言ってキラの体を両手で色々触り始めた。

「っ、大丈夫だって。僕もそれなりに仕事こなしてるんだから」

「まぁお前はめんどくさがりなだけで本当は優秀だからな」

「でしょ?」

 にこーっと笑うキラにアスランはやれやれといった感じで小さくため息をつく。

「体力あるほうじゃないんだからあんまり他にも尻尾を振るなよ」

「は?」

 首を傾げてアスランをじっと見つめた。

「お前最近シンと寝ただろ」

「!?」

「あいつは本当に俺が嫌いなんだな。俺が来ると分かっていて二の腕の後ろや背中にキスマークをわざとつけたんだろ」

 アスランは腕を伸ばしてせっかく着たキラの軍服に触れて丁寧に脱がせていき上着をはだけさせた。

 中に着ているTシャツを思い切り引っ張って鎖骨あたりに顔を埋めてキスマークをつける。

「ちょっと!」

「……なぁキラ」

「君さっき僕に体力が無いって言ったよね」

「俺が動くから寝てるだけでいいぞ」

 そう言いながらアスランはキラの上着を完全に脱がせてソファの上に丁寧に置いた。

「アスランはそう言ってもねちっこいからイヤなんだよ」

「そうならないように務めるよ」

「シャワー浴びたでしょっ」
 
 アスランに手を引かれてベッドまで歩かされるキラがバッと腕を振りほどく。

 振りほどいたのにアスランはもう一度キラの腕を掴んで今度は強引にベッドに押し倒した。

「お前こそこんな簡単に服を脱がされてダメじゃないか」

「脱がせたのはアスランでしょ!」

 アスランの胸をグイッと押すキラの右手首をアスランは掴んで彼の手のひらにキスをする。

「早起きしたお前が悪い」

「いつもは早く起きろって怒るくせになんなの」

「あれは一つのお遊びだよ。お前の寝ぼけた顔を見ながら世話するのが良いんだ」

「意味分かんない」

「そうだな」

 ズボンのベルトにアスランは触れて慣れた手付きではずした。

 そしてズボンのチャックに手をかけた所でまた扉の音が鳴る。

 二人はぴたりと動きを止めた。

 キラがアスランに扉の鍵かけてないかもと伝えると、アスランがキラから離れてベッドを降りる。

 扉の前までアスランが歩いて行き開閉ボタンを押すと廊下にはイザークが立っていた。

「は?」

 思わぬ人物にアスランは驚く。

「キラ・ヤマトはいるか」

「あ、ああ。いるけどまだ寝てる」

「そうか。じゃあ今日のジュール隊との実技シュミレーションだが訓練場をまた間違えられても迷惑だから俺が来るまでこの部屋で待機していろと伝えてくれ」

「分かった」

 扉が閉まってすぐキラがベッドから降りる。

 振り返ったアスランがキラに「今の聞こえたか?」と声をかけた。

「聞こえた」

 奥のスペースから出てキラが言う。

「いつから親しくなったんだ?」

「親しくなんてないよ。迷惑しかかけてない」

 そう言ってキラはさっきまでは履いていなかったブーツに足を入れてソファに座った。

「まぁイザークさんってかなり面倒見いい方だとは思うけど」

「あいつの性格上キラみたいなのは特に放っておけないだろうからな」

 苦笑するアスランを見てキラはふーんと返事をする。

 アスランもバスローブを脱いでソファに置いてあった鞄から服を取り出して着替え始めた。

「珍しく早起きした理由がイザークとのシュミレーションとはな。効果てきめんだな」

「アスランこそそんな姿で出て良かったの」

「普通の感覚なら俺達がただれた関係だとは思わないだろ」

「まあそうだね……」

「しかし残念だな。夜までお預けか」

 アスランはそう言いながら扉横にあるハンガーにかけていたオーブの軍服を手に取る。

 キラがそんな彼の方へと振り返った。

「君今日もここに泊まるの?」

「ダメなのか」

「べつにダメじゃないけどプラントに来るたびザフトの僕の部屋に入り浸ってていいわけ?」

「ここ利便性抜群なんだ」

「うわぁ〜」

 キラが嫌そうな顔をするのを見てアスランが笑う。

(…………あれ?そういえばイザークさんわざわざ二回来てくれたんだよね……アスランはシュミレーションを午前だと思ってるみたいだけど午後からに変更になったはず……ん?夢じゃないよね??)

 キラは不安になり先にアスランを見送った後、誰かに確認しようと思っていた所、途中でイザーク本人と会ったので時間の確認をすると呆れた顔をされた。

 キラは謝ってすぐにその場を離れる。




 午後
 


 言われた通り部屋で待っていたキラをイザークが迎えに来た。

「わざわざすみません。ありがとうございます」

「貴様を探すより遥かに効率がいいだけだ」

「そろそろ大丈夫ですよ」

「先週の件をもう忘れたのか」

「あれは!まさか三箇所もあるなんて知らなくて……」

 あーだこーだと会話をしながら歩く二人

 訓練場に着いた後は実技シュミレーションをこなして意見交換もそつなく終わった。

 キラは服を着替えて帰ろうとした所でイザークに呼び止められる。

「この後予定はあるのか」

「いえ、帰るだけです」

「うまい店を紹介してやる。来るか?」

「……あの、ご飯に誘われているんでしょうか?」

「無理にとは言わん」

「違います!行きます!ぜひ行きたいです!」

 キラは初めての事に胸の奥がざわついて落ち着かなかった。

「アイツも来るようなら早めに連絡をくれ」

「えっ?」

「朝貴様の部屋にアスランもいただろ」

「あ、えっと居ましたけど、でもアスランの予定は知らないです」

「アイツも来るなら早めに教えてくれ」

「はい……」

 キラはさっきまでドキドキしていた気持ちが一気に沈む。

(僕だけが誘われたわけじゃなかったんだ)

 キラはモヤモヤしたまま着替えて部屋に戻った。

 まだアスランは帰っていなくてキラは仕事で遅くなるとメモ書きをテーブルに残して私服に着替えて部屋を出る。

 イザークの前でキラは「アスランは仕事みたいです」と嘘の報告をした。





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