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□夏祭り
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風になびく君の髪
落ち着く優しい匂いがする
『夏祭り』
夕暮れ時。
8班のメンバーが任務を終えて家へ帰る途中。
ヒナタの隣にキバ、その隣に赤丸とシノが並ぶ。
赤丸を挟んでシノに任務の際の小言を言われてキバが「うるせーっ」などと言い返していた。
ヒナタはそんな二人の会話を聞きながらくすくす笑う。
そこに後ろから声をかけられた。
「ヒナタ様!」
ヒナタだけでなくキバもシノも後ろを振り返ると、そこにはネジが居た。
キバはスッと警戒した顔になる。
「こ、こんにちは兄さん」
ヒナタは驚いて声が裏返った。本人はそれが恥ずかしくて下を向く。
ネジはそんなヒナタを見てクスリと微笑した。
「任務を終えたみたいだな もう帰るのか?」
「あ…はい」
「なら一緒に帰らないか? 俺も任務が終わって帰る所なんだ」
「あ、えと……」
ヒナタは特に用事はないし、自分たちも帰る途中だったため断る必要はなかったのだが、チラリと二人に視線を移した。
「……悪いなネジ 俺たち8班は紅先生のとこに行く途中なんだよ なっ?シノ」
「わっ…」
キバがヒナタの肩を抱いてシノに聞く。
ヒナタは驚いて目をパチパチさせて「え?」という顔でキバを見る。
ネジはすごい形相でキバを睨みつけた。
「キバの言うとおりだ ヒナタ、忘れたのか?」
「えっ? あっあの……」
ヒナタはオロオロして何も言えなくなった。
それをよく知るキバとシノがネジに「じゃあな」「失礼する」とお互いが口を開いて、向きを直し(半ば強引にヒナタの向きをキバが変えて)歩き始める。
ネジは一人取り残されてしまいチッと舌打ちをした。
ヒナタはさすがにネジを気にかけて、キバに肩を抱かれたままであったが後ろを振り返る。
ネジはそれに気づいてヒナタにしか見せない笑顔でにこりと笑った。
ヒナタはその姿を見てホッとしたような表情を浮かべてネジに頭を下げてまた前を向く。
「なあヒナタ」
パッとヒナタから手を離すキバ。
「なに?」
「なんで紅先生の所に行くのネジに嘘だって言わなかったんだ?」
「二人が……」
「あ?」
「?」
(行かないでって顔をしてた気がしたから…なんて言ったら、図々しいかな?)
ヒナタは言おうかどぎまぎしながら、結局そのまま黙ってしまう。
「まっ、別に理由なんてないよな! 俺たち仲良し8班だしな」
ニカッとキバが笑う中、シノも肯く。
ヒナタも嬉しそうに微笑んだ。
「それじゃ飯でも食いに行くかっ!」
「うんっ!」
「ヒナタ、どこ行きたい?」
「えっ? えっと……キバくん達は?」
「俺は一楽」
「俺もそこでいい なぜなら近いからな」
「私も賛成だよ 赤丸くんもいい?」
にっこり笑って、ヒナタは赤丸をきちんと見た。
「ワンッ」
赤丸は嬉しそうに吠えると、ヒナタの横に駆け寄った。
三人と一匹は横に並んで、楽しそうに笑いながら一楽へ向かう。