BLEACH 零

□出会い…(仁編)
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「ん……?」

仁はソファに横になってからあれこれ考えていたらいつのまにか眠ってしまっていた。

そのまま寝入った仁は起き上がり毛布がかけられていたことに不思議に思っていると、ドアにノックの音が響く。

「樋崎いるか」

薫の声だった。

「はいっ」
「夕飯の時間だ 食堂にいる」
「分かりました すぐに行きます」

仁は返事をしてすぐに服を着替えて髪をとかして食堂に向かう。
扉の前から香姫と薫の笑い声が聞こえてきた。
仁はその様子を扉の間からソッと見る。

(優しい顔……)

少し気分が暗くなりつつ食堂に入る仁。

「仁はこの席です どうぞ」

香姫は薫の横の席を案内した。

「ありがとうございます…」
「お口に合うか分かりませんけれど召し上がってくださいね」

笑顔で香姫は仁のコップに飲み物をよそう。

「樋崎これ」

一枚の紙を渡されて受け取った。
家での決まりごとが薫の直筆で細かく書いてある。

「ありがとうございます あの、良ければ紫堂副隊長も仁とお呼びください」
「ああ ソレ、特に重要なことはないがこの家での決まり事」

仁は紙に目を通してから汚れないようにと隣の椅子に紙を置いた。

三人での始めての食事は香姫から仁への質問ばかりで、薫はやれやれといった感じで笑う。

優しく笑う香姫と薫の暖かい雰囲気と食事に仁は何だか辛くて一番先に食堂から離れた。

食後の紅茶を飲み終えた香姫は先ほどまでいた仁の席を見る。
その姿に薫は笑った。

「姫、俺と仁は違います 初日から質問しすぎです」
「そうですよね 疲れているご様子でしたのに無理をさせてしまったかしら」
「まだ環境に慣れていないだけです…(まぁ、あなたの温かさに……)」
「明日からもずっとお会いできるのだから楽しみですね」
「ええ」
「薫、飲み終えたカップはそのままでいいですよ いつも薫はお手伝いのしすぎです 今月の当番は私ですからゆっくりして下さい」

カチャカチャとトレーに乗せながら香姫は言う。

「いいえ、分担表はこちらになりましたから姫こそ上がって下さい 今日の夕飯もおいしかったです」

席を立ち上がり香姫にある一枚の紙を渡した。それは仁に渡した紙と内容が同じである。

カップが全て並んだトレーを手にとりキッチンに運んでいく薫。

薫が勝手に決めた分担表を見て香姫はすぐさまキッチンへ駆け寄った。

「薫!何ですかこれは」
「仁にも渡してしまいましたからこの三ヶ月はそれでいいですね」

食器をすでに洗っている薫に香姫は何を言っても無駄だと悟り諦める。

「…分かりました それでは任せます」
「はい」

キッチンから大人しく出て行く香姫を誰が想像しただろうか。
この数年で薫は香姫の扱いも上手くなった。





――――――――――



お風呂から上がった仁は食堂に寄ると台所にいる薫を見かけて扉に近付いた。

「紫堂副隊長?」
「仁も風呂上がりか」

扉を開けると、窓を開けて外を見ていた薫は後ろを振り返り仁に話しかけた。

「はい 何か見えるのですか?」

仁は笑顔で薫の近くに歩いていく。

「あれ」
「……香姫隊長?」

薫が指を差した方向を除けば香姫が見えた。

屋敷から数q先に修行場がある事は知っていたが、自分の部屋からは見えないので初めて見た。

修行場へは庭から下に続く階段があり、実はどの部屋からも木々によって見えないことになっている。
唯一この換気用の台所の窓からは見えるみたいだ。

「鍛錬しているのですか?」
「ああ」
「紫堂副隊長は…ご一緒しないんですか?」
「俺は昔から朝型だ それに寝起きの悪いあの人を起こすのも日課のようなものだから」

香姫を見ながら薫は困ったように笑う。

(あ……やはり紫堂さんを変えたのはあの方で…優しいのは、この表情はあの方にだけ向けられていて………)

持っていたタオルをギュッと仁は強く握った。



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