BLEACH 零
□もしも…紅院香姫が1日だけ猫になったら
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「みー……にゃ?」
(んー……え?)
その日は珍しく起きてすぐなのに目が冴えていた香姫。
不自然な声と体の違和感を除いては、いつもと変わらぬ朝だった。
『もしも…零番隊隊長が1日だけ猫になったら』
朝、目が覚めると零番隊隊長 紅院香姫は猫の姿になっていました。
(猫?………桜、私の声聞こえる?)
香姫は窓に写る自分の姿を見て、自分のベッドの横の机にある斬魄刀まで軽々しく飛んで、桜に話しかけた。
〔分かるわ☆ 全く、どうしてそんな事になったわけ?〕
呆れた桜が言う。
(分からないです 目が覚めたらこんな事になっていました)
〔はあ、どうするつもり?〕
(えっと……)
〔何?〕
(桜……このまま外に行くのは危険かしら?)
しっぽをふりふり回して明らかに行く気満々な態度のくせに、しおらしく尋ねる香姫。
〔…香姫は呑気ね〕
(姉様を知っているから)
〔そうね 分かったわよ☆ 夕方には戻りなさいよ〕
(ええ 帰ってからも体が戻らなければ神無月さんを通じて話してもらいますね)
〔香姫‥霊圧も小さくなっているし、私がいないのだから無茶はダメよ いいわね?〕
(ええ)
〔……行ってらっしゃい★〕
渋々認めた桜はそう言うと刀に戻っていった。
「行ってきます!」
香姫は紙を用意して、ペンを口にくわえて器用に文字を書く。
それをベッドの枕元に置いてから、自分の部屋のドアを頑張って開けて隊舎から出て行った。
そして、日課のように薫が香姫を起こしに部屋へ訪れた時、紙を見た時の薫の表情は桜だけが知る秘密。
――――――――――
〜二番隊隊舎前〜
(あれは、破蜂隊長かしら?)
塀の上を歩く香姫が破蜂らしき人影を見つけたがそのまま歩いていた。
「!……」
破蜂は香姫に気づいたのか、辺りをキョロキョロ見回して塀の上へと飛ぶ。
そして香姫に手を伸ばしたので香姫もテクテクと破蜂に寄って行く。
「にゃー」
(こんにちは 破蜂隊長)
香姫は猫だというのに頭を下げて挨拶をした。
(かわいい…)
破蜂はその行為に癒されて香姫を抱っこする。
香姫も破蜂の首元をすり寄ったりして静かにしていた。
間近で見る破蜂の笑顔。
そんな破蜂を見ていて香姫の方が嬉しくなり、「にゃーにゃー」と何度も鳴いた。
破蜂は降ろしてくれだと思ったのか、名残惜しい感じで香姫を地面に降ろす。
香姫は新たな発見に嬉しくなりながら、しっぽをふりふりさせてその場を後にした。
――――――――――
〜三番隊隊舎〜
吉良がなんだかため息をついているのを発見する。
香姫は足元へ寄って、すり寄りながら「にゃー」と鳴いた。
「っ!」
(吉良副隊長、どうされました?)
「猫か……、猫はいいよね 自由気ままで……」
吉良はしゃがみ込んで、猫の頭をちょっと悲しそうに撫でる。
そこに市丸がニコニコしながらやって来た。
「イヅルー そんな所でサボってちゃだめやろ〜?」
「サボってなんかいません! むしろ隊長を捜していたんです!」
バッと立ち上がり、吉良はいつものように市丸に仕事をするよう言う。
市丸は渋々「分かったわ〜」と言って体を半回転させたが、瞬歩でサボる為に立ち去ろうとした……のだが、止めた。
香姫がちゃっかり市丸の足の裾をかじっていたのだ。
市丸は猫に目線を移す。
「隊長? どうしました?」
「この猫ちゃんイヅルのなん?」
「いえ、どこからか入って来たみたいです」
「ふーん?」
香姫は「にゃー」と、惚けた顔して鳴いた。
市丸は隊首室まで猫が自分の元を離れないので仕方なく仕事を始める。
吉良は不思議になりながらもホッとしたように市丸の仕事姿を見ていた。
香姫は(吉良副隊長は大変なのですね)と、思いながら隊舎を後にしする。