黒子のバスケ
□君の笑顔が見られるだけで
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彼のこんな表情を見たのは初めてで言いにくそうにしている彼を諭して、黒子は一呼吸しグッと拳に力をいれて声を振り絞る。
「…青峰くん はっきり言って下さい 君らしくないですよ」
「は?」
青峰は黒子からの言葉に驚いた。
そして目を合わせれば何故か黒子が泣きそうなことに気づく。
「テツ?」
「今日はお先に失礼します」
置いてあった鞄を手に持ち、その場を走り去る黒子。
その一連の行動に青峰は力が抜け持っていたボールが足元に落ちた。そのボールはゴール下に転がっていき、青峰は走り去る彼を訳もわからず追いかける。
青峰に黒子が叶うはずがなく、数メートル先で追いついた彼に腕を掴まれた。
バッグは落ちて、それでも暴れる黒子は青峰に両腕を掴まれ壁に押し当てられる。
「何をするんですか!」
振り返り睨みつける黒子に短気な青峰はつい怒鳴った。
「お前こそ! そのすぐ怒るクセ治らねーのかよ!」
「放して下さいっ」
「放さねえよっ 一生放さねえっ!!」
「なっ何を言って…っ」
青峰は黒子の唇を無理やり奪う。
黒子はされるがままで、彼の激しい口付けに息を漏らした。
「…っ、ぁ…お、…っ、青峰くん!」
肩で息をしながら黒子は青峰を見る。真剣な顔の彼に背筋がぞくっとした。
「好きだ」
その言葉は先ほどまで暴れていた黒子の耳によく聞こえ、吸い込まれそうなほどの彼の強い瞳に目を逸らさず、黒子も告げる。
「僕も、好きです」
その言葉は今度、青峰の耳によく聞こえた。そして掴んでいた手を放して黒子を抱きしめる。
「テツ!!」
強く抱きしめる青峰に黒子も嬉しそうにするが、あまりに強い力なので「痛いです」と怒った。
そんな彼に青峰は笑い、力を弱める。その表情を見て黒子は彼の胸元に顔をうずめて抱きしめられながら笑った。
一頻り笑った後、二人は離れてお互いを再度見つめる。
「テツ 好きだ」
「はい 僕も青峰くんのことが好きです」
嬉しそうに笑う青峰に黒子も微笑む。その顔が可愛くて青峰はまた口付けをした。