etc…

□独り占め
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鶸が梵天となり、鶸と露草の間には前とは違う溝ができた。

露草は梵天が寝ている間に平八の所によく遊びに行くようになっていて、今日も塔を出て平八の元へ出かけていく。

露草がたどり着いてふすまを開けると、そこには平八は居なかったが紺と鴇がいた。


「あれ〜? 露草じゃん」

「馴れ馴れしく呼ぶな!」

「何で〜? 俺とお前の仲じゃん」

ニコッと笑う鴇に、露草は近寄って不機嫌そうに思いっきり頭を殴った。

鴇はすぐに頭を押さえ涙目になる。


「馬鹿かお前は」

紺がハッと蔑むように笑った。


「おい、平八はどこだ」

「今は出かけてるよ〜 俺たち留守番頼まれたから 時期に帰って来るよ」

「そうか……、」

少し悩んだ挙げ句、露草はふすまの扉に寄りかかる。


「中に入れよ ひょっとこ来るまで居るんだろ」

「えっ…」

露草へ話しかけたのに鴇がピクリと反応して篠ノ女を見て話しを続けた。


「・・・篠ノ女さ〜前から思ってたんだけど、俺に対してだけ酷くない?」

「はあ? 何言ってんだ?」

「篠ノ女は露草に優しい! 俺というものがありながらさ〜ヒドいよね〜」

鴇はぐちぐち言い始める。


「意味の分からねえこと言うな! そいつがそこに居るとふすまが閉められねーだろ 俺は少し風邪気味なんだよ」

「えっ? そうなの?」

鴇が篠ノ女に寄り、紺の髪を手でかきあげて自分の片方の手をおでこに当て、もう片方の手を自分のおでこに当てた。


「ヤメロ」

紺は怒ってはいないが、鴇の腕を掴んでムッとした。


「え〜? 熱があるか計ってるんじゃん」

「そんなもんてめえで分かる それよりお前は入れよ」

「……」

露草は中に入るわけではなくふすまを閉めて縁側に座った。


「うわ…露草らしいね」

鴇がくすっと笑った。

そして、ふすまを再び開けて露草に中に入るよう声をかける。


「いい」

「寂しいじゃんか〜」

「うるせえっ! 嘘吐くな」

「本当だってば ほら、お茶も用意するからさ」

「はっ」

露草は鼻で笑う。
それに鴇はムカついたので、ふすまを閉めてわざとらしく大きな声で言う。


「あ‥平八お帰りー お茶飲む?」

「!」

露草がピクリと体を反応させて立ち上がり、ふすまを開けようとしたのだが自動でスラリとふすまが開いた。


「えへへー、引っかかった」

鴇は開けたふすまの横に立っていて、にこりと笑う。


「お前っ〜〜!!」

露草は本日第二回目の拳骨を鴇の頭にくらわせた。
すぐさま鴇が頭を抱えて下を向く。


「チッ……中にいればいいんだろ」

露草はふすまを乱暴に閉めた。


「いっ、痛い‥」

「自業自得だろ」

紺が本を読みながら鴇に言う。


「やっぱり篠ノ女ひどいしっ! ……あ、やっぱり」

露草の前に立ち、鴇が笑顔で露草を見た。


「?」

「露草って背はあんまり高くないよね」

「オイ‥喧嘩売ってんなら買うぞ」

「うわっ…違うって! 梵天と並ぶと背が小さく見えがちだったからさ、どうなのかなって」

鴇は手で頭のてっぺんを押さえながら弁論する。


「……細かい事にうるせェ男だな」

「う〜ん でも背は重要だよ?」

「?」

「高い人を女の子は好きなの多いし」

「は?…」

露草が頭を傾けて、不思議な顔をした。

紺はその姿を見ながら、(こいつに言って分かるわけねえだろ…)と、心の中で思う。


「まあ、とりあえずこんな時とかさ〜」

鴇は露草に近づいてガシッと抱きしめる。


「な!!」

「こういう時に男の方が背が高い方が女性はいいって事!」


―――ガラッ



「ありがとな〜 紺と鴇…と、露草っ?」

「あ、お帰り平八ー」

「おう、ただいま」

ちょうど平八が帰って来たみたいでふすまが開いた。

二人が抱擁している姿に平八はごく自然に驚くが、鴇が挨拶してくるので流れで挨拶をする。

ただ平八が扉を開けるちょうど数秒前、梵天は庭に立っていて…。


「何してる」

そのたった一言。

息をするのが苦しいほどの異様な雰囲気を味わう、鴇、紺、平八。

露草だけは普通に構えていた。




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