神様からの平等

□第6話
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5月2日。
GW前日。

そして、合宿初日。



烏野高校男子排球部はこのGW期間合宿という名の強化練習をする。
そして、初日の練習も終わり、部活動合宿用施設というところへ移動する。






「うおおおおおっ!うおおおおおおおっ!」

「お前ちょっと落ち着け」

「だって合宿初めてだしっ」

『こいつッ・・・学校でもそわそわしすぎて、先生にションベンかとか言われてたぜ』

「ユウさんんんん!!!?それ言わない約束でわ!?」






日向の騒がしい様子に影山は注意し、教室の様子を思い出してユウは隠れて笑う。
その様子を見て、月島も嫌な顔をする。



「一日中むさ苦しい連中と顔をつきあわせて何が楽しいのさ」

「「おい月島てめえ半径500m以内に潔子さんが居る空間はむさ苦しくねえんだよ」」

『はーい、一応女子もう1人いまーすけど』



月島の言葉に田中と西谷が反論する後ろでユウも手を上げながら、主張する。
すると田中と西谷の言葉を耳した菅原はそのまま2人へと口を開く。




「清水は家近いから用事終わったら帰っちゃうよ。いつもそうじゃん」


「「(ずーんっ)」」

『え、だから私もいるって言ってるじゃないですか』




菅原の言葉に明らかに気を落とす田中と西谷にユウはまた再度声をかける。
するとゆっくり振り向いた田中がユウの肩をガしりと掴み、そして涙ぐむ。



「く、くそお・・・!致し方ない・・・っ。今回の合宿の華として・・・お前に女子という勲章をやるッ・・・だから・・・だから・・・!!!」

『え、一発殴って良いかな?これ一発殴って良いかな?先輩だけど、多分これ殴っても大丈夫なやつだよね?』

「この際ちびっ子でも良い!!!俺達を癒やしてくれ!!」

『はーい、殴りまーす』






ボコッと綺麗な音が田中の頭から響き渡り、そのままユウは華麗に逃げる。
その後を田中は追いかけるが、食堂で待ち構えていた(?)清水のエプロン姿に鼻の下を伸ばし、ユウを追いかける気すらなくなった。






















『じゃあ、潔子さん。後の時間は任せてください!』

「本当に大丈夫・・・?私が帰ったら女子一人になっちゃうけど」

『大丈夫ですよ!繋心がいますから!!』


「まあ・・・コイツ性別上は女だからな。一応、身内の俺がここに居て、連れて帰るわ」

『本当はお泊まりしたかったけどね!!!』

「・・・すみません、よろしくお願いします」




さすがに女子1人をここに置いとくのはまずいという事になり、清水より少し遅い時間まで残り、繋心と一緒に帰るという流れになった。
ユウも泊まりたかったらしいが、保護者役の繋心が早朝は店の手伝いがあるそうで一日中ここに居ることは出来ないため、渋々帰ることになった。
合宿施設の玄関で清水は靴を履き、玄関先でユウと繋心が見送る。
遅い時間になったため、武田が帰りがてらに清水を送るそうだ。





「じゃあユウちゃん。この後の洗濯とか任せる代わりに、朝は私が作りに来るからね」

『うっす!潔子さんの手料理待ってます』

「ふふっ・・・じゃあ、また明日」

『お疲れ様です』

「気をつけて帰れよー」




清水と武田は武田の車前で軽く一礼して、そのまま乗車し、合宿施設を後にした。
それを見送った繋心とユウは施設の中へ入る。




「お前の家送ったら余計遅くなるからこのGW中は俺ん家に泊まっとけ」

『きゃー繋心ってば、大胆〜』

「実家だけどな」




実家とは坂の下店のことである。
ユウの悪絡みもいつも通りスルーしてそのまま繋心は奥の部屋へと向かう。
態度は横暴であるが、ちゃんとユウが仕事を終えるまで待ってくれる繋心の心遣いに少し嬉しくなる。

ユウは洗濯機が洗濯し終えたか確認するため、そのまま向かおうとすると、曲がる角で影山とバッタリ会った。




『うおい!影山くんじゃん』

「お前、何処ほっつき歩いてたんだよ」

『いや、潔子さんの見送りを・・・』

「ほれ」


『へ?』





どうやらユウを探してたらしい影山は何故か手に持っている携帯をユウに差し出す。
画面を見ると、通話中と記されている。
ユウが首をかしげているとはやくっと影山に急かされたため、そのまま携帯を耳に当てた。

え、なに?
もしかして私、影山のママと会話しれ的な流れ?



眉を寄せつつ、もしもしと呟くと、









《「あっ、やっと出てくれた!!!やっほ〜〜!元気にしてるー?ユウちゃんの大好きな、及川tーブチッ」》







耳を当てた瞬間、携帯を離してでも聞こえる大きなテンションの高い聞いたことのある声。
嫌な予感がしてすぐさま喋りつつづけていた相手の声を遮るように通話終了ボタンを押すユウ。
本当、嫌な男の声がしたわ・・・。


すると切った後、すぐに影山の携帯が鳴り響く。
ディスプレイの画面には"及川徹"と書かれていた。





『・・・影山。これどういう事?なんで及川さんが?』


「及川さんがお前と話したいって。春高今年数量限定の新作Tシャツがかかってんだ。電話に出ろ」




影山くんや・・・。
同じチームメイトの私より限定Tシャツの方を取るのかい?
さすが、バレー大好き単細胞マン。



影山の数量限定新作Tシャツの圧に負け、未だ鳴り止まない携帯の通話ボタンを押す。
ユウが電話に出たのを見届け、そのまま部屋に戻る。
いや、関心なさ過ぎだろ!影山!
あなたの大事なマネが他校の主将に絡まれてんだよ?!


影山の背中を見送りながら、鳴り止んだ携帯に向けて声を出す。



『・・・もしもし』

《「あー!!やっと取った!!酷いよ、ユウちゃん!勝手に切るなんて!!」》




やはり電話の相手は青葉城西の正セッター及川の声であった。



『いや、今合宿でちょっと忙しかったんです』

《「うんうん、知ってるよー。トビオから聞いた!」》

『(あいつ、情報漏洩すんなよ)・・・んで、なんですか?私に』

《「うーん。ユウちゃんと話してみたくなっちゃった!」》




てへっと語尾に聞こえるぐらいのあっけらかんとした態度にユウは見えない電話相手に呆れる。


『私は用もない電話とか嫌いなんで、切りますね』

《「ちょ、ちょ!!?待ってよ!!嘘嘘!!全然話ある!!」》




ユウの淡々とした口調に電話先で慌て出す及川の声に小さく吹き出してしまったユウ。






《「・・・今、笑ったでしょユウちゃん!・・・まあ、いいや本題だけど、このGW中にさ、どっかデートでも行かない?って思って」》

『・・・・・・話聞いてました?GW中は合宿なんですけど』

《「(デートにはツッコまないんだ)・・・そんなずっとじゃないでしょ?及川さんが時間合わせるから、少しの時間でもどっか行こうよ!」》

『生憎、合宿はずっとなのでっ!!じゃ、次のインハイまでさようなら』

《「え、ちょっ・・・!?まっ」》




ーぶつっ




及川の声を無視し、そのまま通話終了ボタンを押し、また携帯が鳴り響かないように、携帯の電源も切っておいた。

なんだ、あの人。
女にモテそうな顔して、こんな他校の一回しか会ってない女子に遊びに誘うとか。
なんなの?プレイボーイなの?
やっぱり、北側第一はプレイボーイが多いのか?




そう呆れながら、影山が居る1.2年が寝る部屋へ向かう。
扉を開けると、ちょうど風呂から出たであろう縁下達2年生と風呂の準備をする影山達1年生の姿があった。



「新城ちゃん・・・!?か、仮にも男子部屋なんだから、入るときノックしてね」

『あ、すいません』


扉の近くに居た縁下に忠告に軽く一礼して、携帯の持ち主である影山の元へと向かう。
そして携帯を差し出し、影山に聞く。






『ねえ。及川さんって欲求不満なの?』

「?・・・まあ、今彼女いるって聞いたし、欲求不磨だから彼女いるんじゃね?」



『え、まじで?』





ユウの問いに意味が分からず、最近聞いた及川情報をユウに暴露する影山。
その言葉にユウは驚く。



いや、あいつ、彼女いるくせに他の女を誘ってるのか。引くわー。





そう虚ろな目をしたユウに周りの2年は何があった!?と騒ぎ出す。
そして、何故か施設の奥から日向と田中と西谷の騒ぎ声+澤村の怒鳴り声が聞こえた。





















ーーーーーーーーーーーーー烏と猫と,

















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