銀魂

□おれは、坂田銀時だ
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誰かが死ぬ。










そんな夢を最近よく見る。


背丈や格好で女性のような感じではあるが、顔のあたりに黒いもやがかかっており、誰なのかさえはっきり分からない。
ただ林の中で何者かに背後から刀で斬られ殺されるのをいつも私は客観的に見ている。



それが毎日のように夢の中で流されるのだ。







最初の頃は、ただ誰かが殺されて死ぬ姿が映し出されるだけだった。
だが、3日4日経つと今度はその殺される前の出来事から映し出されたり、仲間と思わしき人達と会話している出来事から映し出されたり、しまいには殺された人の子供時代の映像まで流れ、最後にあの殺される場面が映し出され、目が覚めるのだ。

夢に映し出される夢物語は、誰かわからない女性の生涯を映し出しているように感じた。
誰かと出会い、誰か達とも出会い、そして何者か達と戦い、そして彼女は死ぬ。


その出会った誰かや誰か達、何者達の顔にも黒いもやがかかっており見ることができない。
顔が見えない、わからない夢の中。
本当に心持ちが悪くて仕方のない夢だ。







「…おい、目の下にクマができてるぞ。またあの夢でぐっすり眠れねーのか?」

『副長…。うん、まぁ。』



縁側でぼーっと空を見ていると、一応、職場の上司である土方十四郎が話しかけた。





「…今回の医者もダメだったのか?」


『ん〜、精神安定剤とかもらったけど、いつもと変わらずこの調子さ。』






そう、この気味の悪い夢のせいで、私は全然ぐっすり眠れていないのだ。
原因を突き止めるために周りや医者に相談してもただの疲労やらなんやらで改善できる余地がない。
もしかして、この夢はただの自分の想像力で作り上げた夢なのだろうか…。
違うとしたら、一体この夢は……。













そんな夢を立て続けに見て、早一ヶ月。
私はまた夢を見た。
今回もまた薄暗い屋敷の中にいた
ああ、またあの夢か。
今回はどんなストーリーなのだろうか。
どこかで授業しているところか?
仲間と出会ったところか?
何者かと戦ってるところか?
でももういい加減飽きてきたなぁ。


すると、目の前にもう見慣れてしまった姿を持つ殺される女性が居て、その隣には仲間の1人であろう男性らしき人がいた。

2人は楽しそうに談笑している。


そんな2人の姿を客観的に見ている私は今回もつまらなさそうな夢だなと思っていた矢先…。




「ーーーと一緒に赤飯食べたいな」

「こんな時にも赤飯かよ、…っしかもいつも一緒に食ってるじゃねーか」

「違うよ、何ものにも邪魔されず、自由な世界で…そーだ!」



女性が男性と一緒に赤飯を食べたい、という言葉を発していた。
たわいもない話なのに、なぜかどうしてか、心の中が騒つき、モヤモヤする。
しかも私は大事な男性の名前を聞き取れなかった。


すると女性は勢いよく立ち上がり、大きく手を広げこう言った。




『ーーーっ!
戦争が終わった時に一緒に赤飯を食べよう!!
その時は勝利のお祝いとして。』



また、女性が発した男性の名前が聞き取れない。そのところだけモザイク音がかかってるような感じだ。
女性の顔は見えないが、多分笑顔で笑いながら提案しているのだろう。
そういう雰囲気が流れていた。
なんだろう、
なぜかこの言葉が他人事と感じられない。
私の心の片隅になぜか、引っかかる。





すると、隣にいた男性も口を開いた








「…はっ、任せろ。俺がお前の顔に勝利の祝いとして赤飯叩きつけてやるよ…

















ーーー、な?」






ードキッ

『っ?!!』








女性の隣にいた男性が、客観的に見ていた私の方へ顔を振り向け、同意を求めたのだ。
これまで、客観的に私の存在などいないままストーリーが進んでいたのに、いきなり私の存在があらわになった。

なぜか私は彼が同意を求めた瞬間、心がざわついた。
そして心臓がぎゅーっと握られてるように締め付けられた。
なんだろう、この感覚。
なぜ、こんなにも悲しくて、つらいの?


初めて夢の中で話しかけてくれた彼に声をかけようとした瞬間ーーーーー



目の前の景色がぐにゃりと歪んだ
あまりの歪みようにとっさに私は目をつぶった。












そして、気がつくと、辺りは先ほどいた薄暗い屋敷の中ではなく、林の中だった。
とても見覚えある場所…。

そうここは、あの女性が背後から刀で斬られ殺させる場所であーーーー…



ザシュンッ








え?
何か後ろから斬られた音が聞こえた


後ろを振り向こうとするが、
なぜか体が言うことを聞かない
そして意識に反したままなぜか
身体が倒れた



え?なんで?力が…身体が…動かせない




するとなぜかどんどん背中から痛みが広がってきた、そしてどくどくと何か背中から流れて出る感覚を感じた。
それはどんどんとその場の地面に広がっていく。
生臭い、鉄の匂いがした…




これってまさか……血?




うつ伏せの状態のまま、目ん玉を精一杯横に移動させると、

そこに立ってたのは、天人。
そして、手に持っているのは血塗られた刀。



この光景どこかで見覚えある。
そう最近ずっと何度も何度も見てきた夢のあの場面にそっくりだ。

何者かに女性が殺させるあの場面。


するとどんどん瞼が重くなってきた
薄れゆく意識の中で必死に考えた。




あれ?そういえば、あの女性は?
もしかして、この天人があの何者?
その天人に今、斬られてるのは私?


え、もしかして、もしかして、モシカシテモシカシテモシカシテ………



あの夢で毎回のように現れ、殺されてたのは…












『……私、?』






















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