銀魂

□ただいま
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銀魂/銀時 切なくて甘い

ただいま











あれからお前は俺の前から消えた






戦争に負けた
先生も消えた
仲間も消えた

俺たちは、何のために戦ってきたんだ



薄暗く、悪臭が立ちこめ、金属と金属の激しい打ち合いの音が聞こえる中。
俺たちは、あいつと背中を合わせ闘った


昔ぐるみの付き合いだった
1日1日を生き抜くことが精一杯だった俺に松陽と小柄だからどこか強い瞳を持ってた少女が立ち塞がった。
『一緒に生きようよ、銀髪くん』

それが俺とあいつの出会いだった。

あいつは放浪癖がよくあった
すぐどっかへ行くし、いつの間にかいなくなっていることがある。
でも、帰ってきたときはいつも

『ただいま』
そう言って帰ってくる

その言葉でいつも周りの俺たちは安心する
それを知っててあいつは言い、またどこかフラッといなくなる
それがあいつの癖だ。





松陽が捕まったあと、松陽を助けにいく気持ちは同じだった。
だから一緒にあの戦争を仕掛けたんだ
女の身でありながら、先陣を任せ切れるほどの器。
そんな器でもありながら、仲間を大切にする優しい心。
周りの野郎どもは、あいつに惹かれていた
そう、俺もその1人だった

けど、ある闘いの後、あいつは姿を消した
またいつもの放浪癖だろ
そう思いながら気にも留めなかった。





その日からあいつは姿を消した




来る日も来る日も探した
それでもあいつは一向に見つからない。
ある日、隊士の一人が呟いた

「死んだんじゃ…」
















俺は気がつくと、桂に身体を止められていた
目の前にはあの呟いた男が血だらけになりながら、苦しそうに倒れてる。

ああ、俺が殴ったのか

お前がいないと俺は何もできねぇ。


……ただの夜叉のようだ

























「….っ!…っ銀さん!!」

新八の声に我にかえる

「どうしたんですか、銀さん。ボーとしちゃって」

「気にすることないネ、新八。どこぞの女に振られて拗ねてるだけアル」



2人は銀時を見て、ため息をつく
銀時は、神楽の言葉にひどく心を痛めた


振られてねぇよ、神楽
振られることすらできなかったんだから

もっと早くお前に、気付けばよかった
もっと早くお前に、伝えればばよかった
もっとはやく、お前を、抱きしめればよかった
そんな淡い願いさえ、もう、叶えきれない。


「…ぎんさん、本当に大丈夫なんですか?これから久しぶりの仕事なんですよ」

「私はもう、卵かけご飯ならぬ醤油かけご飯は飽きたネ」



「わーってるよ、ただの二日酔いだ二日酔い」

昔の思い出を振り返ると、やる気さえも奪われていく。
それぐらい、あの思い出は大切な大事な思い出






ちりんっ





「っ、」

「あ、あれ、お客さん?」
「なんか用ネ、いまから私達仕事行く予定アルヨ」



どこからか懐かしい鈴の音が聞こえた


『あら、そーなの?なら単刀直入に言うわ…』

髪が長く、スラッとした女性。
だが、俺は、その彼女の面影に酔いしれる











『坂田銀時、否、…銀はいる?』








俺がどれだけ探そうと、探しきれなかった女
俺がどれだけ待とうと、現れてこなかった女

俺がどれだけ手を伸ばそうと、掴めなかった女







「っ、おい、…っお前っ…」
驚きすぎて言葉が出てこない、口が動かない


そんな時、彼女は










『ただいま、銀』

「っ」

またあの言葉を言い、俺に笑いかけた








ただいま







(その言葉は俺にとって苦痛で暖かい言葉)











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