境界線上のホライゾン 夢小説

□序章『境界線前の整列者達』
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「ヤーさん」
青雷亭と書かれた看板が掛かる店に向かって連れ立って歩いていた二人の少年のうち、茶色の髪に笑ったような目、小脇に紙袋を抱えた少年が、
彼の少し後方を歩いていたもう一人を振り返って言った。
「俺の名前は弥宵だ。人をヤクザみたいに呼ぶなといつも言っているだろう、トーリ。で、なんだ?」
問いかけに、トーリと呼ばれた少年はそのいつも笑っている様な顔に少しだけ真剣さを滲ませて言った。

「―――俺、決めたよ」

◆◇◆◇

音が響いた。
音は、歌声だった。

「――通りませ――」

 通りませ 通りませ
 行かば 何処が細道なれば
 天神元へと 至る細道
 御意見御無用 通れぬとても
 この子の十の 御祝いに
 両のお札を納めに参ず
 行きはよいなぎ 帰りはこわき
 我が中こわきの 通しかな―――

歌は大気を通り、やがて消える。

その代わりに、新しく響く音があった。
一つ二つ三つと鳴り、音楽のように続く鐘の音には、放送の声が被っていく。
『市民の皆様、準バハムート級航空都市艦・武蔵が、武蔵アリアダスト教導院の鐘で朝八時半をお知らせ致します。
 本艦は現在、サガルマータ回廊を抜けて南西へ航行、午後に主港である極東代表国三河へと入港致します。
 生活地域上空では情報遮断ステルス航行に入りますので、御協力御願い致します。――以上』
音と声が響くのは中央後艦奥多摩の上。その上にある建物が音の発生源だ。
木造の、横に長い三階建ては、前後に二棟。チャイムを鳴らす二つの建物は、入り口の門扉に鉄の表札を持つ。

武蔵アリアダスト教導院≠ニいう表札を。
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