shortnovel〜sweet〜
□届かないもの
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昔、師匠の娘が読んでいた本を1度だけ開いた事があった。
"塔の上のラプンツェル"
なんの捻りもなく、題名そのものの内容だった。
塔に幽閉された美しい少女、ラプンツェル
階段も何もない塔を上がる唯一の方法は綺麗に伸びた彼女の長い髪
一人の王子が塔に捕らえられたラプンツェルを救うため悪戦苦闘するあげく、愛でたく結ばれる話だ
はたから見れば実に幸せな話だが、私には理解できなかった
王子ともなればいい女は回りに沢山いるはず
それなのに何故わざわざ1人の女に四苦八苦するか
女も女だ
本当に王子を愛しているのなら、自分ではなくもっと普通の町娘と結ばれることを願うべきではないか
いや、願ってはいたのだろう
それなのに未練がましく髪を塔から垂らして男を誘い込む
男は期待するに決まっている
理解できなかった