□じゅりあい
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ねぇ、先生。
先生は運命ってあると思う?
私はないと思うなぁ。
だってさ、出会ったのは偶然でもそれなりの関係になるには努力が必要だと思うの。
だから私と先生がこんな関係になったのも努力したからであって、必然なの。
あはは、そんなに難しい顔しないでよ。
私ね、先生のそういうばか正直なところ好きだよ?褒めてるって。
ねぇ、先生。
私に恋を教えて?
私だけの先生なんでしょう?


この世に神が存在するなら私はあなたを恨むでしょう。
存在しないならあなたにすがってこの出会いを運命と呼ぶでしょう。
…どちらにせよあいつと出会う前に出会いたかった。
恋ってなんなんだろうね?
私にもわからないよ、珠理奈さん。




愛李side

1年春

春が来た。
私が先生をしているこの大学にもたくさんの新入生がはいってきて。

私はこの女子大で生物を教えている。

「あぁ、もうこんな時間。」

気付けばもう授業の時間でもはや私物化している生物準備室を出て講義室に向かう。

「憂鬱だ。」

正直、授業をするのは楽しいけど真面目に授業をするのは苦手。


そんな授業も終わってそろそろ夕焼けの時間。
生物準備室に戻ろうとしてたら目の前のドアがいきなり開いた。

「あ、古川先生。」

この子は今年からの新入生で、松井珠理奈さん。

ひっそりと目の保養にさせてもらってるすごい綺麗な顔立ちの子。

「お?おお、松井さん。じゃあね。」

「そのプリントもってくの手伝いますよ?」

拒否する間もなく手に持ってたプリントの山を半分もってくれた。

意外と優しい子なんだな。

「ありがとう。生物準備室までお願いしていい?」

「もちろんです。」

無言で廊下を歩くのもなんだか苦じゃない。

「あ、ついた。ありがとね。お礼と言っちゃなんだけど、飲み物くらい出すよ。コーヒー、紅茶、ココアどれがいい?」

「あ、ココアで。」

ココアなんて可愛いもの飲むんだ。

「コーヒーかと思った。」

「コーヒー苦くて飲めないんですよ。古川先生、ブラックとか飲めます?」

「あー、ブラックしか飲めない。」

「うそ!?すごーい!」

飲み物をいれながら話してるとコロコロと表情が変わったり、意外と幼く見えて新しい1面を見た気分。

「はい、ココア。」

「ありがとうございます!古川先生ってなんか面白い人ですね。」

飲みながらだらだらと話して、なんかこっちも仕事そっちのけで話しちゃうくらい松井さんは話してて面白い子だった。

「松井さんって呼ばれるの嫌です。」

「んー、じゃあ、珠理奈さん?」

「それならいいです。」

いいと言ってたけどかなり不服そうな顔をしてる。

「そんなに怒んないでよー。あ、もうこんな時間だね。帰ろうか?送ってくよ。」

楽しい時間ほど過ぎるのは早い。
気付けば時間は8時を回ってた。

「こんな時間ってまだ8時ですよ?お母さんみたい!」

「まだ未成年でしょ?はやく帰りなさい。」

「んー、じゃあ。古川先生が私のお願い聞いてくれるなら帰ります。」

「なに?」

またココアかな?

「私を抱いてくれませんか?」

はい?
いまこの子はなんと?

「冗談はやめようね?」

笑いながらそう言ってみたけど、珠理奈さんの目を見たら本気なんだって実感した。

「先生…。」

「…本気?」

「先生のこと好きになったわけじゃないんです。ただ遊んでみたくて。」

「だめだよ、私には妻がいるから。」

そう、私には明音がいるから…。

「先生のうそつき。」

「え?」

「先生、入学式のときから私のこと見てたでしょ?知ってますよ。」

にやりと笑う珠理奈さんに正直どきっとした。

あぁ、もう、どうにでもなれ。

「どこがいい?」

「ここでいいです。さっき見たけどベッドあるんですね、ここ。」

「まぁね。お泊まりもあるからさ。」

珠理奈さんの手を取り、奥にあるベッドに連れていく。

「先生…。」

「今日のことは内緒だからね?」

「わかってます。」

行為の最中、頭に残ってるのは視界の隅にあった赤いピンヒールと珠理奈さんがうわ言のように玲奈ちゃんとつぶやいたこと。




行為が終わっていつものように煙草に火をつける。

「あ、煙草だめだった?」

「大丈夫です。古川先生いつも煙草の臭いしますもん。」

「そっか。」

明音に対しての罪悪感はもちろんあったけど、思ったよりはなかった。

「これからもこういうことしてもいいですか?」

「…珠理奈さんが内緒にできるなら。」

「できますよ。」

「それなら…うん、よろしく。」

ここから私たちの関係は始まった。

end(つづく)
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