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□空と風と君と。
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時が止まる、とはこういうことなのかと思った。
大きな窓の外には、きれいなスカイブルーの空が広がる。
そこを真っ白い入道雲が、ぷかりぷかり、と漂う。
窓枠に囲まれたそこだけがモノクロの世界から抜け出したよう。
自分のいる薄暗い廊下には重たい空気がのしかかっている。
窓を勢いよく開け放つ。
ずん、
と体に振動が伝わった。
風が一気に吹き込んで、
髪を、シャツを、煽る。
外のカラフルがこちらにも流れ込んできたような、
自分も空を飛んでいるような
幻想。
カツ、と背後で音がした。
聞き慣れた靴の音。
ゆっくりと振り返り、後ろに立つラビに顔を向ける。
ユウ、と口が動いたのが見えた。
ただ黙って相手の目を見つめた。
互いに何も言わない。
その時、ひときわ強い風が二人の間を駆け抜けた。
あまりのつよさに一瞬目を閉じる。
舞い上がった髪を右手で押さえもう一度ラビの方を見やると、ラビも目を細めて見ていた。
いっそ、このまま時間なんて止まってしまえばいいのに、と思った。