刃を交えるとき

□6話 昼下がり
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今日は芹沢の外出の予定が無かったので平間さんと手分けして掃除とかしてみる。事故的要素は含まれるが一応置いてもらっている身なので、時間があれば何か手伝いをするのが僕の習慣となっていた。途中で源さんに門の辺りの掃除を頼まれ、只今ほうきで掃いているところだ。
我ながらよく働くもんだうん。
こっちに来てからこういう気が利くようになった気がする。木の葉に帰る頃にはどこにでも嫁に出せるような娘になっていることだろう。
…嫁か………僕っていつか誰かと結婚するのかな?相手はヒナタがいいなぁ。
間違った。相手は男なんだ。誰がいる?ナルトとリーはサクラが好きでサクラとイノはサスケでヒナタはナルトで…だとしたらルーキーの余りの男子はとシカマルとチョウジとキバとネジと蟲だからー、、、んー、無い、かな。

……てか第七班モテるな!

この衝撃的な事実に1人で驚いていると、ふと視界の端に見知らぬ男の姿をとらえた。男の表情は風でなびく髪に隠れてよく見えないが、浪士組の門の奥を見つめているようだった。腰には刀。刺客の可能性は低いが、一応警戒しておく。


「何か用でも?」

その言葉に男はゆっくりとこちらを振り向くと、名前と土方さんに会いたいというのを簡潔に言ってきた。
そこで待つように言い、土方さんを呼びに行く。土方さんの部屋の前にたどり着き、障子越しに声をかける。

「土方さんいますかー?」

「……何だ。」

やや間があって不機嫌そうな返事が返ってきた。この典型的な仕事人間は僕みたいなガキに邪魔をされるのが嫌らしい。あ、自分でガキって言っちゃった。ともかく遊びに来たわけじゃないっての。

「土方さんに会いたいって人が来てるよ。」

「俺は今留守だと言ってこい。」

「でもすごくキレーな人だよ?」

「女か。なおさら帰させろ。」

「いや、男だし。斎藤一って言ってた…」

「斎藤一!?」

突然障子が開き、完全に油断状態だった僕は驚いてカエルが鳴くような変な声をあげてしまった。

「し、知り合いなんだ?」

「あぁ。斎藤は試衛館時代からの仲間だ。」

そう話す土方さんは珍しくとても嬉しそうで、そうか、斎藤が来たのか、と言いながら門の方へ行ってしまった。




その後は平助や左乃さん、新八さん、総司も加わり、みんなで昔話に花を咲かせていた。斎藤一も時折微笑を見せており、みんなの仲の良さが伺えた。
かつての仲間が帰ってくるなんてこちらとしてはとても羨ましいことである。サスケもこの人みたいに戻ってこればいいのに。

そうこうしているうちに、昔からライバル関係である総司と斎藤一が手合わせをするという方向に話が移っていった。その様子をぼんやりと眺めていた僕に横から源さんがこれは見なきゃ損!みたいな感じで言ってきた。木刀持った総司はなるべく避けるようにしていたけれどしょうがなく僕も見に行くことにした。
だってなんか源さん嬉しそうに話すんだもん!断れないよ!


左乃さんの大きな影を借りつつ様子を見る。
木刀を持って向かい合った二人からは殺気さえも感じ取れた。忍においても同じだが、一瞬の隙が命取りとなるため刀を構えると極度の集中力が必要である。忍の場合は戦っている最中も様々な作戦を組み立てていくため、一旦身を隠したり煙り玉などで目眩ましをしたりする。だが武士の場合はそのような選択肢は無いに等しい。常にお互いが向かい合い、激しく剣を交わすのだ。ごまかしの効かない戦い。研ぎ澄まされた眼光がかち合うその瞬間、ゾクゾクと背中をはい上がるような恐怖とも喜びともつかない感覚に襲われる。この感覚を、今目の前にいる二人も感じているのだろうか。


とうとう動き出した総司。
振りかぶった分斬り付けまでの時間はそう早くは無かったが、スピードの乗った一振りは重さを増して襲い掛かる。斎藤は正面から受けとめるが、その細身の体が一瞬軋むように沈んだ様子から、その威力が凄まじいことであることは見てとれた。

斎藤も負けていなかった。三段突きもかわし、仕返しとばかりに素早い斬り込みでじりじりと総司を追い込んでいく。一度二本の木刀がけたたましい打撃音と共に離れ、二人の間に距離があいた。

次で決める、二人のそんな意思が空気を伝って感じ取れるようだった。


そして……

「そこまで!」


新八の掛け声で勝負は終わりを迎えた。結果は斎藤の勝ち。それまでの激しい打ち合いが嘘かのような鮮やかな躱しで斎藤は総司の脇腹に木刀を滑らせていた。

実戦慣れしてるな、というのが僕の感想。相手を倒すには何でもいいから致命傷を負わせなければいけない。加えて体格差で負けるならなるべく体力を削らない戦法が必要だ。この男はそれを実行していた。武士にもこんな戦い方があるのかと意外でもあった。そしてこの人に剣を学びたいと思った。
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