No Innocence
□2題
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「クククッ……あはははははっ、謙也、ホント最高じゃっ……!」
『クスッ…桔梗さん、ほんま良い性格してはりますね……つくづくそう思いますわ』
「お褒めに預かり光栄、じゃの」
『そうや……桔梗さん、今度いつ大阪来ます?』
「あーー……帯子ちゃんおるき、めんどいのう……」
『……部長、なんとかしてください』
「あはは、絶対嫌じゃの。あいつは面倒じゃき。……そうじゃの、再来週の日曜日……辺りなら行ける筈じゃ」
『そうっすか…楽しみにしとります』
「クク……そうじゃ、謙也は?随分と静かになっとるが』
『桔梗…!』
『うっさいっすわ、謙也さん』
『光っ……もう俺あかん、耐えられへん……』
きっと、今の謙也はがっくりと肩を項垂れているだろう。実際どうしているかは分からないが、あいつ等ともそれなりに付き合ってきた、大体の事はもう分かっている。
「もうええかの?そそろ切るナリ」
『…しゃーないっすわ。またメールでもします』
『はよ大阪来てな!!』
「はいはい……んじゃ」
ボタンに触れ、通話を切る。
何処となく、淋しさが心に残る。きっと、彼らには何と無くだが心を許している面が多いからだろう。なにしろ、ここ氷帝学園には知り合いが全くと言って良いほど居ない。勿論今日のうちに知り合った人間も数人だがいる。だが、この数時間で簡単に心を許せるような人間でもないんだよ僕は。
ゆっくりと、制服の上から己の肌を撫でる。
微かな痛み。
それはあのことが紛れもなく現実だという事を知らしめてくれる。
……痛い。何もかもが、赤く感じたあの時のように。
ただ、決定的に何かが違うのだ。
ここには、彼らは居ない。それがよりいっそう恐怖を掻き立ててくる。
自然と体が震えてきたが、それはひんやりとした風のせいにしておいた。