No Innocence
□10題
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普段通りの無機質な音が部屋に響く。
朝が来たんだ、とぼんやりとした頭で考えていると、数分が経っていた。
いつも通りに準備をし、いつもと同じ時間に家を出る。
「行ってきます」
休日の環境だったならば、こう言えば誰かが返事をしてくれたのだろうか。
ふとそんな事を考えてしまうが、していても仕方がない。
今はこっちに居るんだ、僕自身が選んだのだから。
「おはよ」
「あ、桔梗ちゃんおはよ!」
2日ぶりの教室は、何処か懐かしい感じがした。当然だが、休日明けなのだからなんら変化もない。
唯……、教室へ入るとき、またアイツ等が此処で笑って待ってくれていると考えてしまっている自分が居たのが酷く嫌だった。
結局、僕はまだ向こうの環境に依存しかけているのだ。此処は違うというのに。
だが、そう簡単に新しい環境に慣れることもできないものなのだ。
あの時もそうであったし、勿論今もだ。
「おっす、水月おはよー」
「あ、宍戸君おはよ。朝練」
「そ。だからいっつもギリギリなんだよな」
「お疲れだねー。」
「そうでもねぇぜ?……なあ」
「ん?どした、宍戸君」
「その、宍戸君っての止めね?むず痒いんだよな」
「……じゃあ、亮って呼ぶわ。それだったら僕の事も名前でいいよ」
「わかった、桔梗」
「そーそー、それ。んじゃ、亮またね」
「おう」
名前呼びとをすると、何処か互いの距離が縮まったような感覚を受ける。
きっと、それほどまでの進展があったのだろう。
彼が肩に掛けていた物は、視界に入れないようにした。
少しだけ、指先が震えた。