短編

□Candy
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何気ないいつもの時間。それが私は一番好きだ。

今日も、一番の親友であるブン太と2人で談笑中だ。


私はいつもアメをなめながら生活している。どうやら、アメがないと私は落ち着かないらしい。だから今のように親しい人と談笑している時も、それがたとえ授業中であってもアメをなめ続けている。

日ごろがそれな所為か、よく不良に間違えられる。私自身、これで今まで何十年生活しているのだ、なんら問題ないのだが。傍から見ればおかしいんだそうだ。
私のそんなクセを知っている人物は多くいるが、その理由まで知っている人は少ない。その数少ない人が、今私の目の前にいる彼だ。


「なあ、今日のテストどうだった?」

「……何も聞かないで、ブン太」


私が何かを悟ったような顔をすれば、直ぐに理解したような顔をして静かに肩を叩いてきた。


「そーいうブン太はどうだったの?テスト」

「……お前なら分かってくれる」


なんだ、お前もかと2人で馬鹿みたいに笑っていたら、突然ブン太の顔付きが変わった。


「なあ、名前って好きな奴とかいるのか?」

「…………………は?」


いきなりそんな話を振られるなんて全く考えていなかった。頭が一瞬真っ白になるが、聞かれたんだから一応は答えなければいけない。……雰囲気的にもスルーできそうにない。
さらに言ってしまえば、今この場には私たち以外誰にも居ない。いつも通り、2人で下校している最中なのだから。


「…一応は、いる」


そうゆっくり呟いたら、彼の表情が一気に暗くなった。


「………そっか」


酷く残念そうに言う彼を見ていたら、口の中で転がしていたアメを思わず噛み砕いてしまった。

お互いがだんまり状態の中、アメの砕ける音だけが響く。
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