No Innocence

□1題
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彼の肩にアレがあると気付いたのはファーストコンタクトのとき。おそらく、向こうにはこっちが視界にいれないようにしている事に関しては気付かれていないはずだし、まず相手が僕である時点で気付かれる確率はほぼゼロと言っても過言ではない。

僕は、それほどまでに演技等に自信がある。
現に今もこうして仮面を貼り続けているんだ、それ位の事出来なくては桔梗の名が廃るんだよ。


まあそれは置いておいて。
アレを視界に入れないためには当然前を向き続けなければいけない。しかし、初対面の人間と目を合わせずに話すというのはどうなのかと感じもするので、彼とそれとなく目を合わせながら、アレを視界に入れないという我ながら高度な方法を取っている。

早く着いてくれ。

そう祈りながら談笑をしていた。











「ここだぜ、職員室」

「ここかぁ……ありがとうございます。…そうだ、名前、教えてくれませんか?折角親切にして下さったんですから。僕は水月桔梗です。」

「俺は宍戸亮だ。よろしくな、水月」

「宍戸君……ですね。本当にありがとうございました。それでは」

「あ、あぁ……」

 
少し笑みを浮かべて言えば、何故か赤くなる宍戸君。風邪か?はたまた赤面症か。まぁどちらにしてもどうでもいいか。



無事、何もアクションを起こさずに職員室へ着く事が出来た。
宍戸君には本当に感謝の一言しかない。

宍戸君のおかげで折角目的地に着く事が出来たのだから、今は考え事よりも目的達成だ。





職員室とは、何故こんなにも近寄りがたい雰囲気を醸し出しているのだろか。何か得体のしれない物や結界やらそういう類の物でも張っているのだろうか?

……つまりは、入りたくないということ。

まあ普通に入るけどね。



「失礼します。転校してきました水月ですが。」


そういった瞬間に集まる視線。
昔から、人の視線というものが嫌いだった。特に大人からの視線からは嫌悪しか感じることが無い。これも全て僕の生まれ持ったものの所為だとは分かっているのだが、やはり慣れることはないし慣れたくもない。


「ああ、あなたが水月さん?……小林先生が見えるはずだから、あ、ほらあそこよ。小林先生の処へ行って?」

「分かりました。どうもありがとうございます」


礼を述べて少しはにかめば、何故か目の前の女性教師の顔が薄く朱に染まる。
風邪?……まあ僕には関係ないか、うん。
さっきの宍戸君といい、どうして赤くなるのか。全く持って不思議だ。
そういえば、向こうでも度々……というかほぼ毎日といっていい位あった。こちらも関係ないと割り切ってスルーしていたが。



「おお、水月来たか!お前の担任の小林だ、よろしくな!お前のクラスはC組だ。」

「分かりました、宜しくお願いします」


どうも、高圧的な態度をとる人は苦手だ。
理由を訊かれれば…一応あるのだが、そう易々と人に話せるような内容でもない。
無論、全ての人が駄目だというわけではないし、この田中……?だっけ、先生の場合はまだ耐えれる程度。別段気にする事もあまりないだろう。


そんなこんなで話は進み、田中先生?もういいやこれで。田中先生と教室、つまりは3年C組へ向かうこととなった。
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