No Innocence
□2題
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―pipipipipi
無機質な音が屋上に響く。
その発信源は紛れもなく僕のポケットにある携帯だ。
その無機質感にすこし煩わしく思いながらも、仕方なしに携帯を出し、相手を確認する。
『ヘタレ』
そう表示される言葉に、少し笑ってしまった。勿論、相手が誰かなんて勿論分かる。登録したのは紛れもない僕なんだから。
あんまり待たせてもあれだから、口元に薄く笑みを浮かべながらも応答ボタンに触れた。
「なんの御用ですか?ヘタレさん」
『ちょ……開口一番がそれかいな!』
「僕は事実を述べたまで。何、ヘタレが嫌なら浪速のヘタレスターとでも呼んであげようか?」
『なんでやねんっ!ヘタレちゃう、浪速のスピードスターや!』
「……自分で名乗る辺りに寒気を覚えるよ。普通そういうものは自分で名乗るのではなくて、人から言われるものでは?」
『なっ……も、もうええわ!桔梗の馬鹿っ!』
……不覚にも、可愛いと思ってしまった。なに、その馬鹿の言い方。お前が乙女か!
「……そっか。謙也は僕のこと嫌いだったんだよね、ごめん……切るわ」
『ちょ、ちょい待ちーや、誰もそんな事言っとらへん!』
「あ、そう。だったら別に良いんだけれども。」
謙也をからかうのもこれくらいにしておいて。
そろそろ本題に入るように促さねば、このままだとさらに脱線し兼ねない。
「謙也、わざわざ授業中に電話掛けてくるんだからよっぽどの用事でしょう?早く要件言ったら?」
『そ、そうや!あかん、完璧忘れとったわ……そうや、桔梗口調どうしたんや?いつものあのもの方言ちゃうから聞きなれへんのや。』
「あぁ……あれ?此処学校でしょ?誰に聞かれているか分からないから標準語で喋ってる。ほら、一応此処ってテニス強いでしょ?片割れのこと知ってる人、少なからず居る筈だよ。予防線は張るに越したことはないしね。」
『あ、そうか……』
「あはは、なんて声してるんだよ…あの事はもう良いんだから。ほら、さっさと要件述べる!」
『おう……あんな、##NAME2##行った学校、氷帝学園やろ?そこ、俺の従兄弟居るんや。んで……………』
「なに、いきなり黙って。……大丈夫、僕は平気だから」
『おん……桔梗には何も言わんと悪いと思ったんやけど、こっちで起きた事…軽くやで?喋ってもうたんや。ほんますまん、桔梗!』
「ああ、別にいいよそれくらい?まあ、一応その意図だけ聞いておこうかな。」
携帯から発せられる彼の言葉に、僕は少なからず驚いた。