No Innocence

□3題
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知らないクラスに入るというのは、些か戸惑われる。唯、その中でも良心的というのはそのクラスのドアが開いているというところだ。


「忍足侑士って、いる?」


その言葉を口にした瞬間、比較的近くにいる群青色の髪の男子生徒が反応した。


「俺やけど。……もしかして桔梗ちゃん?」

「そー。話あるんだけど、いい?……あ、長くなるから弁当を持ってくる事をお勧めするよ」

「おん、分かったわ」


特徴的な関西弁を聞いて、あぁ、本当に謙也の従兄弟なんだな…と僅かながら感じた。









彼と一緒に来たのは、比較的人が少ないという中庭。その中でも日陰で、ベンチがある人が居ない場所に腰掛けた。


「改めまして、水月桔梗です」

「忍足侑士や。……あれ、聞いとった名字とちゃうんやけど」

「あぁ……あの名字だと、ちょっと面倒だから。あまりないしね、仁王ってのは。勘が良い人だと直ぐに身内だってバレる危険性があるし」

「そうなんや…色々考えとるんやな、やっぱり」

「うん、そうでもないと怖いから……そうだ、謙也からはどれ位のことを聞いてるの?」

「おん、勘違いされて大阪に連れてかれて、テニスやったんはええけどスランプきたら暴力紛いんことされた……っちゅう程度やな、確か」

「うん、謙也は上手く説明してくれたね、要点が押さえてある。ちょっと見直したかな」

「……今は大丈夫なんか?」

「そうだね……日常生活には支障はないよ。ただ、テニス関連のものを見たりするのはやっぱりできない」

「そうなんや……せや、なんかあったら直ぐ頼ってな?この学校で知っとるんは俺くらいやろうし」

「それ、謙也にも言われた、大丈夫。…それじゃあ、もし何かあったら、助けて欲しいな。取り合えずそれだけ」

「分かったわ。何でも言ってな?桔梗ちゃんこと心配やわ」

「あはは、そんなに心配しなくても平気だよ。そこまで弱くなんかないしね。……そうだ、あんまり関係ないんだけど、一つ。」


疑問を浮かべている忍足君の耳元にそっと口を近づけて、わざと吐息を含ませながら言った。


「本当はこんな喋り方じゃなりナリ……秘密、ぜよ?」

「!!??!??」


瞬間、耳を押さえながら数歩後後退る。
くつくつと喉を震わせながら笑ってみると、顔を赤くしながら恨みがましそうに軽く睨まれる。
うん、イケメンは睨んでも様になる。


「いきなりなにするん!?ほんま吃驚するわ!」

「ふふ、どう?一応今は人が居るからその口調には戻せないんだけど…機会があったら、是非、そっちの僕で」

「……それもええな。誰にも聞かれんようなとこでゆっくり話すんもええわ…それに桔梗ちゃん、雰囲気が無駄にエロいんゆうか、なんちゅうか」

「あは、それ大阪でも言われた。まあ、時と場合によるけど態とそういう風にやる時もあるよ。片割れが片割れだけに、こっちもそうなっちゃうんだよね」

「……ほんま、止めて欲しいわ」

「そーいう忍足君も、中々な雰囲気だよ?そうだ、今度2人でそーいうふうにやってみる?中々楽しそうだし」


悪戯っぽくそういえば、彼もまた悪戯な笑みを浮かべて、


「せやな、面白そうや」


と答えてくれた。忍足君とは悪友になれそうだ。
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