No Innocence

□4題
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キャアアアア、と何処かから女子の黄色い声援が聞こえてくる。
朝から元気な事だ、と少し他人事に思いながらもその声の元に興味が出てきたのでそこへ向かう事にした。








声のする方へ歩いた先に見えてきたのは緑色のフェンス。
何処となく嫌な予感を感じながらも、歩く速度を少し遅めて向かっていく。

ポーン、と軽快な音が鼓膜を揺さぶる。
これ以上近寄るな、と脳内に自分自身の声が響き渡る。額に僅かに汗を垂らしながらも、少しずつだがそちらへ歩んでいく。

本格的に警鐘が鳴り始めた。
近づくな、それ以上近づいたら危険だ。
脳内での己の言葉が本格的に不味くなってきたので、そこで足をとめた。


絶えず耳に入ってくるあの打撃音。
それは紛れもなくテニスの音だ。僕が今一番関わりたくない物。



打撃音に反応してか、体が僅かに震えだしたのでくるりと踵を返して下駄箱に向かった。



フェンスの向こうから感じた視線は、気付いていない振りをした。



















下駄箱に着いて蓋を開けた瞬間に目にした光景に僕は思わず溜め息をついてしまった。
それはもう、大阪では見慣れてしまった光景ではあったんだが、まさか転校二日目でお目に掛かるとは到底思っていなかったので、ある意味の不意打ちだ。



…案の定、手紙が入っていたのだ。

それも、数十枚ほど。
何故、こんなことを僕がされるのか。それは僕のこの至らぬ頭では到底理解することなどできない。
大人しく手紙達を無造作に掴んで鞄に放り込み、上履きに履き替え少し憂鬱な気分のまま教室へと歩みを進めた。
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