No Innocence

□7題
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人通りの少ない通りを歩いて数分。数メートル先に見知った影が見えてきた。それはもう見間違える筈などなくて。その影を見た瞬間、電車に揺られていた疲れとか諸々吹き飛んで。気が付いたらその影に向かって走り出していた。


「雅っ!」

「桔梗!」


名前を呼んで抱きつけば同じように笑ってくれる。今の僕にとって間違いなく世界で一番大好きな存在。


「雅、久しぶりじゃな」

「元気にしとったかのう?」

「もちろんナリ」


2人で昔のように手を繋ぎ、沢山話をしながら家へ帰る。多少の身長差はやはりあるが、そこは双子だ。口調も、見た目も基本は似ている。男女で違うところがあれど、やはり双子なのだ。
……だからこそ、あんな事が起きてしまったのだが。
今更思い返しても仕方ないと分かっている。だが、雅は僕のせいで罪悪感を感じている。後でしっかり言っておかないと僕が納得しない。



いつの間にか家の前に着いていた。
見慣れたドア。
此処が確かに僕の家なんだ、再実感した。
一回は帰ってくることができたが、その時は家中が柄にもなく慌てふためいていて。いつも通りと言える生活を送れたのは本当につい最近だ。
このドアの向こうに家族が居るんだ…と思うと少し嬉しい。


「どうしたんじゃ桔梗、入らんのか?」

「ん、入る」



ドアを開ける。
その向こうにいたのは紛れもない僕の家族で。
全員が笑顔で待っててくれて……自然と僕の顔も綻んだ。


「…ただいま。」

「「「「おかえり、桔梗」」」」
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