No Innocence
□10題
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いつもの如く授業をサボらせて頂いた僕は今、放送室へと足を運んでいる。
場所は予め聞いておいたため、問題はない。
「……着いた、んだよね……?」
一応放送室には着いた、着いたのだ。勿論中にも入ってみた。
………なのだが。
「設備整いすぎでしょ、これ……」
半ば呆れ気味で口にしてみる。
正直、予想は出来ていた。
この学校自体がかなり規格外で、学校も広く、学習環境も整いすぎている。
……認めたくないものだな。
「あの、何してるんですか?」
「!?……いや、呼ばれたから来たんだけど」
いきなり声を掛けられるととても焦る。
声を掛けた張本人はそう思ってはいないようだが。と言うか、キノコだ。
「で、僕は一体どうして呼ばれたの?君、報道委員の人でしょう?」
「……転校生には毎回インタビュー等を行いようにしているんです、この学校は」
「へー、そうなんだ。じゃ、さっさと終わらせようよ、インタビュー」
そういうと彼は少し戸惑ったかのような動作をした後、僕に予想だもしていない回答を寄こした。
「それが………何故か今回はラジオらしいんですよね」
「……え、ラジオ?…………ああ、君がやるんだね。頑張って!じゃあ僕は帰r」
「貴方ですよ!?何帰ろうとしてるんですか!」
「いや……なんか面倒だし」
「僕一人でどうするんですか、転校生を対象にするんですよ!?」
「いーじゃん、別にそんな小さな事。ほら、どーせ声だけだしなんとかなるよ」
「なりませんよ!貴方馬鹿ですか!?」
「あーうん、別に馬鹿でいいや、うん。……まぁ、このまま拒否しっぱなしも疲れるし、時間も押してるんでしょ?仕方ないよね、やるよ。」
そういうと少し驚かれた。
一呼吸置いてから、言う。
「改めて、転校生の水月桔梗です。ラジオ、お世話になります」
自分の中のとびっきりの営業スマイルで言ってやった。
え、あ……と少し口をぱくぱくさせながら徐々に顔を紅潮させていく目の前の彼。
赤くなるほどなのか、と少し疑問を浮かべながらも、落ち着けと言ってやる。
「……2年生、報道委員の日吉若です。こちらこそよろしくお願いします」
少し挑戦的な笑みを浮かべながら言ってくる彼は中々魅力的だった。
勿論、雅には到底及ばないのだが。