短編
□愛されたいの、私だって
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着いた場所は、中庭。
昼時ではあるが、何故かこの場所だけは人が少ない。恐らく穴場というものだろう。
「で、一体何の用なの?柳君」
「……苗字、お前は一体何に飢えている?」
「っ、……どうして今聞く必要があるのかしら、よく分からないわ」
「誤魔化すな。お前の瞳は常に何かを望んでいる。それと…諦めている。違うか?」
核心を突かれた気がした。
確かに私は愛を得る、ということを望んではいるがもう諦めているのだ。だって親からの愛情なんて今更受けることなどできないもの。
「……そうね、確かに私は諦めてる。望んでる筈なのに諦めてるわ。……だけど、それが何の関係があるって言うの…」
少し苛立ちながらもそういえば、少し驚いたような顔をした。
「…っ、貴方に何の関係があるっていうの!?私の何を知っているというの!?」
感情が高ぶってしまったせいか、思わず声を上げてしまった。そんな自分の行動にも驚いているが、目の前の彼はさらに驚いたようで。
「……お前をそこまでさせるほどの物とは一体何なのだ?」
「教えて何になるの?何、貴方が私に与えてくれるとでも言うの!?」
「ふむ……それはお前が望んでいる物によるな。俺が与えられるものであれば幾らでも与えよう。それで、お前がその寂しそうな瞳をしないのであれば、だがな」
そんな言い方をされたら、期待してしまう。
何も知らない筈の、何の関係も無い筈の彼に、その愛情と言う物を与えられるのを期待してしまう。
そんな自分にまた酷く苛ついて、思わず言ってしまった。
「……ぃ、よ」
「…何だ?」
「…、愛が欲しいのよ、私はっ!」
「……………泣くな、苗字」
「え……?」
思わず頬に手を当ててみると、そこには確かに水滴が流れていた。
「な、んで私泣いてるの」
「………お前は愛が欲しかったのだな、ずっと」
「そ、うよ。そーだよ、愛されたいの、私だって」
そう小さくつぶやけば、いきなり暖かい何かに包まれた。