短編
□愛されたいの、私だって
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見上げると、そこには柳君がいた。やっと、柳君に抱き締められているのだと気付いた。
「な、んで抱き締めるのよ…」
「そうしないとお前が壊れてしまうと思ったからだ」
「私は壊れないわよ」
「なら何故泣き続けている」
「これ、は…っ」
「………愛が、欲しいのだろう?」
「え、何言って……」
「愛ならば俺が幾らでも与えてやる。だから泣き止め」
「何で柳君が私にくれるのよ……っ、おかしいでしょ!?」
そう言うと、何故か更に強く抱き締められた。
「……好きだからだ」
「え、何を…」
「お前を…いや、苗字名前を好きだからだ」
「…は、何の情けよ…今更そんな物必要ないわ」
「ちゃんと聞け、苗字。俺はお前が何かをずっと欲しているのには気付いていた。お前に対して恋愛感情を持っていたからな、俺は。そしてそれをずっと、俺が与えてやりたいと思っていたのだ。……まさかそれが愛だったとはな。益々好きになってしまう」
「嘘、じゃないの?本当に?」
「ああ、誓おう」
そう言って薄く笑みを浮かべる彼の姿に、何処か安心感を覚えてしまって。ああ、彼ならば大丈夫かもしれない。私に愛を教えてくれるかもしれないと思った。
「私に、愛を教えてくれますか…?」
「勿論だ」
「私を愛して、くれますか…?」
「当り前だ」
「……私に愛をっ……愛を教えてください…!」
「それはOKととって構わないか?」
「っ、はいっ…!」
流れ続けていた涙はいつの間にか止まっていて、目の前の彼が涙の跡をそっと指で撫でてくれた。