籠球短編
□花言葉7シリーズ
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ベゴニア
『(ドキドキ…ドキドキ…)』
時刻は8時15分。もうすぐあの人が教室にやってくる。いつも朝礼ギリギリの時間になるのは、部活の朝練をしているから。
―ガラガラ
『(きた!!)』
「ふぅ…間に合った。」
『(今がチャンス!!おはようって挨拶するのよ私!!おはようって…おはようって…)』
ドキドキ…隣の席についた男子生徒に挨拶をするべく意気込んだ。
『つっ……』
どうしよう…緊張する!!声裏返ったらどうしよう…変な奴だって思われたら…。
「ひつじさん、おはよう。」
『…!!あ…おはよう…。』
「今日も良い天気だね〜。」
『そっそう…だね。』
私がいつまで経っても悩んでいると、隣の男子から挨拶してくれた。あぁ爽やかな笑顔に癒される…ってそうじゃなくて!!
いつもいつも私からは声を掛けられなくて、彼から声を掛けてくれるのを待つか諦めるかしかなかった。
彼に恋をして早3ヵ月。未だに部活の応援にも行けてない。せっかく隣の席になれたんだからチャンスを無駄にしちゃダメだよね!!
『(…でも…やっぱり緊張するよ!!)』
「………。」
―ガラガラ
「席に着けー。授業始めるぞー。」
チャイムが鳴り授業が始まった。私の好きな人…神宗一郎くんと話をしたいと頭では思っているのに体が言うことをきいてくれない。
『(はぁ…朝は失敗したけどきっとまたチャンスはくるよね!!こんな事ばかりじゃ暗い子だと思われちゃうよ…)』
ガタガタ…
『!!…え…?』
「よいしょっと。」
『…???!!』
な、何?突如ガタガタと音を立て神くんが机をくっつけてきた。
「驚かせてごめんね?声を掛けたんだけど、何か考え事してたみたいだったから…。」
『そ、そうなの?ごめんなさい…で、でも…どうしたの?』
「教科書忘れたみたいだから見せて欲しくて…良いかな?」
『う、うん…どうぞ。』
普段しっかりしている神くんが忘れ物…?珍しい…って、そんな事よりこれは…
「ありがとう。助かるよ(ニコッ)」
『///!!』
近い…!!机がくっついた分、神くん自身も近付くわけで…。腕が触れてしまいそうな距離に、緊張で震えだしそうだった。
幸い私の席は窓側の一番後ろというナイスポジションの為、挙動不審な姿をクラスメイトに見られる事はなかった。
「ひつじさんの教科書って綺麗だね。俺のなんてクタクタになってるよ。」
『そっそうなの…?』
「あぁ。それに…ノートも綺麗にまとめてある。」
『っ///!!』
神くんがノートを覗きこむ時に更に距離が縮まり、肩が触れてしまった。
「ねぇ…ひつじさん。」
『な、何…?』
「頬…真っ赤だよ(スリスリ)」
『///?!!』
「熱でもあるのかな…?」
『だっ大丈夫!!(パッ)」
頬を撫でられあの綺麗な瞳で見詰められ、私の限界はとっくに越えていた。どうしよう…神くんの手…はね除けちゃった。
「ごめん…驚かせたね。」
『っ…』
「でも…(ギュッ)」
『!!』
「俺から逃げないで?」
『え…?』
「手…震えてる。俺がひつじさんに触れたから?それとも…他に違う理由があるのかな…?」
『神…くん?』
繋がれた大きな掌から伝わってきたのは、優しい体温と微かな震えだった。どうして神くんの手も震えているの?
「俺と話すの…嫌?」
『!!そんな訳ない…!!』』
「本当…?そっか…嫌じゃないんだね。」
『うん!!だって私は…』
「私は…?」
『つっ…私…は、その…』
言えない…仮にも授業中だし、こんな…心の準備も何も出来てない状態で告白なんて…
「ひつじさん…教えて?」
『っ…う、ん…私…は…』
神くんは私の手をギュッと握り、次の言葉を待っていた。どうしてそんなに優しい瞳で見詰めてくれるの?
「大丈夫だから…教えて?」
『私…神くんが……』
「俺が…?」
『神くんが…好きっん…!!』
「先生スミマセン、ひつじさん具合が悪いそうなので保健室に連れていってきます。」
「あっあぁそうか。頼むぞ神。」
「はい。行こうひつじさん(グイッ)」
『え…あのっ…』
先ほど唇に突然触れた温もりに戸惑いながら私は神くんに手を引かれ教室を出た。
『あの…神く…』
「ひつじ…」
『んっ…んん…///!!』
「俺も好きだよ…ずっとずっと君が好きだった。」
『///?!!!』
「好きだから…毎日挨拶だけでも声を掛けてきたけど…君はいつも目を合わせてくれなくて俯いてしまうから、嫌われてるのかと思っていた。」
『!!』
「でも…最近なんとなく分かったんだ。赤くなった頬に小さな声でも話をしてくれる姿に…君は俺と同じ気持ちでいてくれてるんだって。」
『神くん…。』
「だから今日…思いきって攻めてみた(ニッ)」
『えぇ?!』
「だってこうしないといつまで経っても俺たち、恋人になれなかったしさ。ひつじは恥ずかしがり屋だから(なでなで)」
『う…ごめんなさい。』
「ううん、俺から告白する事も何度か考えた。けど…君からの言葉が欲しかった。だからわざと大勢人がいる教室で、逃げられない授業中に、教科書を忘れたと近付いて君に気持ちを聞いた。」
『…!!』
「いつも以上にドキドキしてくれたでしょ?」
『神くん意地悪だよ…。』
「ハハッそうだね、意地悪し過ぎた。でもさ〜ひつじの本当の気持ちを聞けて凄く嬉しかったよ(ギュウゥ)」
『///!!』
「これからは…ひつじの方からも俺に声、かけてくれるよね?」
『っ…うん///。』
「ありがとう…大好きひつじ…」
『んっ…///!!』
ベゴニア
花言葉は【片想い】
嫌われてないかとずっと不安だった。
意地悪してごめんね?俺もそうだけど、また明日また今度で後悔して欲しくないから…。