黒子短編
□花言葉6シリーズ
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ヨモギ
「テツヤ2号、何か手伝おうか?」
『大我くん…!!ありがとう。でも部活で疲れてるだろうしゆっくり休んでて?』
「大丈夫だよ。それに二人でやった方が早いだろ?ほら、俺が鍋見とくから。」
『…ありがとう。ごめんなさい…私がもっと要領よくやれば大我くんを待たせたりしないのに…。』
「テツヤ2号…ちょっと火、止めて良いか?」
『え…?』
俺はコンロの火を止め、テツヤ2号を抱き締めた。
『大我くん…?』
「ごめんな(ポンポン)」
『そんな…私が遅いから…』
「違うよ。腹が減ってるからとか遅いからとかで声かけたんじゃない。」
『そう…なの?』
「あぁ。二人で作業した方がテツヤ2号も楽だろうし、それにテツヤ2号と離れてる時間が退屈だったからキッチンにきたんだよ。」
『…!!』
「さっきからスゲー良い匂いするし腹ペコだけど、それよりテツヤ2号の近くで何か手伝いしたくて…だからテツヤ2号を責めたりとか、そう言うのじゃないから…。誤解させてごめん。」
『大我くん…うん、ありがとう。』
「ん。じゃあ二人で仕上げて飯、食うか(ニッ)」
『うん…!!』
ようやく笑ってくれた大好きな彼女の隣に並び、夕飯を仕上げた。慣れない作業に苦戦しつつも俺の体の事を一生懸命考えて美味しくご飯を作ってくれる。そんなささやかな愛情がとても嬉しかった。
「ふぅ…今日もスゲー旨かった。ごちそうさま。」
『うん…良かった。』
「いつもいつもありがとな?テツヤ2号だって学校終わった後に飯作ったりとか大変だろ?」
『ううん…大我くんには部活頑張って欲しいし、それに私に出来る事なんて限られてるから。』
「…テツヤ2号…(ギュウゥ)」
『…!!』
「もし…例えばの話なんだけど。」
『うん…』
「例えば…俺が居なくなったらどうする?」
『え…』
「浮気とかそういうんじゃなくて…突然死んじゃったり、急にテツヤ2号の前から居なくなったら…どう思う?」
『つっ…そんなの…嫌だよ…』
「それは…どうして?」
『だって…大我くんが居なくなったら私…生きていけないよ…っ…大我くんがいてくれるから毎日頑張れるのに…そんなの嫌だよっ…』
「テツヤ2号…。」
溢れる涙を拭いながらギュッと服の裾を掴むテツヤ2号は、今まで見た事がないくらい悲しい表情だった。
本気で俺を必要としてくれている。
「それは俺も一緒(ギュウゥ)」
『っ…?』
「飯作ったり掃除したり、そんなのは頑張れば誰だって出来るけど…」
『………。』
「そんなの…腹は満たされたって俺の心は満たされない。」
『……!!』
「俺をこんなに幸せだって思わせる事が出来るのも、俺をこんなに癒せるのもテツヤ2号だけ。」
『…!!』
「こればっかりはこの世で唯一テツヤ2号にしか出来ないからな(ポンポン)」
『っ…大我くん…』
「だからずっと俺の傍にいて?」
『…うん!!』
「ん、ありがとう…(ギュウゥ)」
『大我くん…』
「…あ〜…ヤベェな…」
『……?』
「俺まで泣きそう…(ギュウギュウ)」
『大我く…』
「見ちゃダメ。」
『わぁっ…』
あんな質問…滅多にするもんじゃねーよな。俺から聞いといて泣くって…それはきっとテツヤ2号の涙につられて…とかじゃなくて、テツヤ2号が居なくなったら本気で悲しいから。
頬を伝った涙を見られぬようテツヤ2号の目を掌で覆い、慌てふためく小さな唇にキスをした。
「ごめんなテツヤ2号…もうあんな事は二度と聞かないから。」
『うっうん。』
「聞かなくたって俺たちの心は繋がってるし…なにより…こんな残酷な質問…俺の方が耐えられない…(ギュウゥ)」
『…うん(なでなで)』
「いつも傍にいてくれてありがとな。」
『うん…!!』
「それにさ、俺がこの家で一緒に暮らそうって言った時も…長い時間悩んで決めてくれて…俺との事、マジで考えてくれてるって嬉しかった。」
『私も…大我くんと一緒の家に住むのは憧れていたけど…簡単に出せる答えじゃなかったし…。慣れるまでは色々とあったけど、今では一緒に暮らせて良かったって…そう思ってる。』
「あぁ…そうだな。学校でももちろん会えるけど、朝起きた時、家を出発する時、ご飯を食べる時、それに夜寝る時に大好きなテツヤ2号が傍にいてくれる。」
『うん///。』
「それにさ…今まで一人暮らしだったから分からなかったけど、帰ってきた時に部屋に灯りがついてるのを見たら…テツヤ2号が待っててくれてるんだって…つい頬が緩んじまう。」
『そ、そうなの…?』
「だから毎日家の扉開ける時は今でもドキドキすんだ。テツヤ2号の笑顔が見られるって(ギュウギュウ)」
『た、大我くん…///。』
「大好き…テツヤ2号(ポフッ)」
『私も…大我くんが大好き///。』
「サンキュ…スゲー幸せ(ギュウゥ)」
ヨモギ
花言葉は【決して離れない】
君を手放すなんて考えただけで泣けてくる。
それは君も同じなんだって…痛いくらい分かったんだ。