籠球短編

□気になる人
1ページ/9ページ


「…今日はソファーで寝るか。」

ひつじを寝室に押し込んでから約3時間が経った。風呂に入り面白くもないテレビを見ていつかは眠くなるだろうと思っていたのに全然眠れない。

「……はぁ。」

眠ろうと目を閉じれば、思い浮かぶのは神と話をしていた時のひつじで。俺と初めて会った時は見せなかった女の子らしい表情…頬はピンクに染まり目をキラキラ輝かせ、スゴい笑顔を見せていた。

「本当に神が好きなんだな…。」

異世界からきたと聞いた時は驚いた…というより何を言っているのか分からなかった。異世界なんてそんなマンガみたいな事があるはずがない。

しかしひつじは空から突然落ちてきた。更には会った事がないのに俺や神の名前を知っていた。それに…あの目は嘘を言っているようには見えなくて…。

今まで女に興味なんかなかったし知らない他人が怪我をしていようと知らん顔をしてきたのに、何故かひつじをその場に放っておく事が出来なかった。

違う世界からきた他人。
動けないからと道路で寝るバカで、料理は下手でよく知らない男の隣でグースカ眠る無防備な女。

だけど部屋に泊まらせる事に、手当てをした事に、神と会わせた事に毎回ありがとうと律儀に感謝の言葉を伝えてくるアイツが少しだけ可愛く思えたんだ。

「本当にちょっとだけ、だけどな。よく見たらブサイクだし…。」

男に免疫がないのか少し顔を近付けただけで、少し顔を見詰めただけですぐ顔を真っ赤にして怒りだすし。

「あんな顔…好きな男以外に見せんなよな…。公園になんか野宿させなくて良かったぜ。」

明日から学校が始まるからひつじとは一緒に居られない。学校…というか部活が終わるまでアイツはどこで何をするんだろう?

こんな知らない世界で一人アチコチ行くなんて出来ないだろうけど…でもあと5日しかいられないんだもんな。

どうせなら神にもっと会わせてやりたいって思うけど…でも…会わせたくないとも思ってしまう…。

「はぁ…今ごろ呑気に寝てるんだろうな。俺の気なんか知らないで…。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ