幻光夜
□間違えた!
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「なぁ、アーロン」
突然のティーダの声に皆の注意を集める。
その中ティーダに名前を呼ばれた張本人は少しの恥じらいと優越感を持ちながら答えた。
「…なんだ?」
その返答を聞いたティーダはすっと椅子から立ち上がり、タッタッタと小走りで1、2メートル離れて見せた。
「…?」
アーロンは、突然のティーダの謎の行動に声もかけることが出来ない。この行動を見せるために自分を読んだのだろうか。
皆もティーダの行動をじっと見つめている。
ティーダはニコニコ笑ってこちらを見つめ返す。
「おい、ティーダ何してんだぁ?」
とうとうワッカが口を出した。
ワッカも自分と同じ思考をしていたようだ。
ティーダはその言葉を聞き、そっと口を開いた。
「アーロン!!こーーーんぐらい腕広げて!」
そう言ってティーダは限界まで、ぐわっと腕を広げた。ティーダは以前とニコニコとしてこちらを見ている。
突然過ぎて、思考する間もなく俺は腕を広げた。
少しせまめだが。
ティーダは手を広げたのを確認すると身体を低くし、こちらを見据えた。
そうそれは、まるで走るときのように…
ティーダの足が床を蹴る。
そのままの勢いを保ったまま、俺の懐に飛び込んできた。衝撃がありありと伝わってくる。
「ぐっ…!」
声を最小限に抑え、鉛玉よろしく飛び込んできたティーダを覗き込む。
その顔はほんのりと赤い。目は浅瀬の海に光が当たった水のようにキラキラと輝き、とろんとしている。
「あーろん…」
ぎゅっと抱きついてくるティーダを反射的に抱きかかえる。
じんわりと伝わる体温。いつもより少し高い。
皆がいる方へ視線を向けると、口を開けこちらを見ている。…たった一人を除いて。
リュックだ。
キョロキョロと視線をずらしこちらを見ようとしない。気まずそうに、何かを隠すように。