book

□底知れずの愛情で__基緑
1ページ/1ページ




「緑川」



名前を呼びながら、ふわりと緑髪のポニーテールを撫で上げる。愛しくて、堪らない。
くすぐったそうに笑うその笑顔。可愛くて、つい見惚れてしまう。彼のすべてが好きで、大好き。緑川のすべてが欲しいなんて我が儘だけど、俺はそのくらい緑川が好きなんだ。手繋いだり、抱き締めたり、キスしてもこの想いは形にならないぐらい俺の愛は大きなものだ。



「ヒロト、どうしたの?」
「何でもないよ」


きょとんとする緑川。その真っ黒で真ん丸な瞳、薄く開いた唇。そのすべてを喰らい尽くしたくなる。きっと、緑川は甘いんだろうな。
ペロリ、と綺麗な首筋を舐めてみる。
……ああ、やっぱり甘い。


「んっ……いきなり何だよ」
「緑川は、甘くて美味しいね」
「また可笑しなことを……」


何故か胸が切なくなるくらい愛しく感じ、衝動的に緑川を抱き締めた。緑川にこの溢れる思いが伝わるように。

「ヒロト……?」
「緑川、好きだよ……大好き」


更に強く抱き締めても、この行き場のない感情は無くなるとがなかった。

愛したい。
とにかく俺は彼を愛したくて仕様がなかった。
愛されるよりも、只彼が俺の前から消えてしまうのでは、という不安な気持ちに押し潰されそうになってしまう。だから彼を愛して、今は俺の側から離れないでくれと、言葉じゃなく、行動で示すことにした。


「……大丈夫、俺も大好きだから」


そう言いながら抱き締め返してくれる緑川の腕は少し震えていた。

……緑川も俺と変わらず不安なのだろう。
棄てられてしまう恐怖、そう、あの時と同じように。俺も緑川も同じ境遇だからこそ分かる。
だけどお互いに求めているのは違うものだった。



愛し方がわからない俺。

愛され方を知らない緑川。


不器用な俺達はまだまだ幼くて、わからないことだらけだけど、俺は緑川に愛を沢山あげて、何十回、何百回も抱き締めて、何百回、何千回もキスをする。

俺のこの溢れている愛を緑川にも分け与えて、お互いの愛情で溢れかえるようにしてしまおうか。


俺の愛を分け与えるように緑川にキスをした。



これで暫くは大丈夫

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ