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□底知れずの愛情で__基緑
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「緑川」
名前を呼びながら、ふわりと緑髪のポニーテールを撫で上げる。愛しくて、堪らない。
くすぐったそうに笑うその笑顔。可愛くて、つい見惚れてしまう。彼のすべてが好きで、大好き。緑川のすべてが欲しいなんて我が儘だけど、俺はそのくらい緑川が好きなんだ。手繋いだり、抱き締めたり、キスしてもこの想いは形にならないぐらい俺の愛は大きなものだ。
「ヒロト、どうしたの?」
「何でもないよ」
きょとんとする緑川。その真っ黒で真ん丸な瞳、薄く開いた唇。そのすべてを喰らい尽くしたくなる。きっと、緑川は甘いんだろうな。
ペロリ、と綺麗な首筋を舐めてみる。
……ああ、やっぱり甘い。
「んっ……いきなり何だよ」
「緑川は、甘くて美味しいね」
「また可笑しなことを……」
何故か胸が切なくなるくらい愛しく感じ、衝動的に緑川を抱き締めた。緑川にこの溢れる思いが伝わるように。
「ヒロト……?」
「緑川、好きだよ……大好き」
更に強く抱き締めても、この行き場のない感情は無くなるとがなかった。
愛したい。
とにかく俺は彼を愛したくて仕様がなかった。
愛されるよりも、只彼が俺の前から消えてしまうのでは、という不安な気持ちに押し潰されそうになってしまう。だから彼を愛して、今は俺の側から離れないでくれと、言葉じゃなく、行動で示すことにした。
「……大丈夫、俺も大好きだから」
そう言いながら抱き締め返してくれる緑川の腕は少し震えていた。
……緑川も俺と変わらず不安なのだろう。
棄てられてしまう恐怖、そう、あの時と同じように。俺も緑川も同じ境遇だからこそ分かる。
だけどお互いに求めているのは違うものだった。
愛し方がわからない俺。
愛され方を知らない緑川。
不器用な俺達はまだまだ幼くて、わからないことだらけだけど、俺は緑川に愛を沢山あげて、何十回、何百回も抱き締めて、何百回、何千回もキスをする。
俺のこの溢れている愛を緑川にも分け与えて、お互いの愛情で溢れかえるようにしてしまおうか。
俺の愛を分け与えるように緑川にキスをした。
これで暫くは大丈夫