短編、中編

□教室の色
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朝のダルいホームルームが終わり、一時限目も終了した。

今は二時限目の英語。
時間は10時。

どこかそわそわしてうるさい教室の中。
先生の声と生徒の英語の発音が、どよめかしくてあまり心地は良くない。

その中で俺は、この前謙也さんに自慢されたペン回しをしていた。気だるくて勉強をする、やる気も起こらない。


……意外と簡単やん。

この前、謙也さんはひたすら「ペン回しはなぁ?凄いねんで?まず何が凄いかって、頭が冴えるやろ。ただペンを回すだけやで!?それだけで頭が冴えるって、神業や思わんっ!?政治家は皆回すべきやね!ぺンをっ。…でもなぁ、出来ない人も居ると思うねん。翔太も出来へんしな…?で、まず出来ないと練習するやん。ペン回しの練習って、まず指に意識が集中するやろ?次はペンの重心、重さ、回転のスピード、バランス、いっぱい考える。…そしたら集中力があがる!ペンを論理的に考えられる頭ができる、数学で役立つ。成績があがる……そう繋がってペン回しによって幸せになれるんやっ!!」って長々と俺に語ってきた。

…そんなん言われても。
しかも、そないにペン回しを深く考えてする奴がおるやろか…?

たかが、ペン回しで幸せになれるか?
絶対ぜんざい食べてた方が幸せやわ。

まぁ、その話は置いといて。


今日初めてしたにしては上手いわ。
…謙也さんほど速くは回せないけど。



俺の教室の机の配置は少し変わっている。
教卓から見てUの形になるようにならんでいる。
そのUの先の方にいる俺は前を向くと黒板ではなく、クラスメイトが見えるのだ。

ただ、ボーッとしてノートも書かずにひたすらペンを回していた。


ふと前を見ると俺と同じようにペンを回している女子がいた。
…名字。
……この前白石部長がカワイイって言ってた子や。
どーせ、すれ違った時にシャンプーの香りがしただけやろ。
…ホンマ白石部長って。
変態やわ。

キモ。

エクスタシーってなんやねん。

名字から何故か目がそらせなくて見ていると、名字は俺のことを手本にしていたのか、目があった。
たしか下の名前は名前。

名前は目があって驚いたのかペンを下に落とした。


拾おうとして身をかがめて、起き上がる時に、アイツは机で頭をうった。
名前は間抜けな声をだして打った所をおさえる。


ダ サ イ


ってクチパクで伝えると、ゆでタコみたいに顔を真っ赤にする名字。



それがもっとおもろくて笑った。

俺がもう一度、ペンを回すと名字もまわした。
そのペンは遠くに飛んでいった。


慌てて取りに行く名前がアホらしくて、カワイらしくもあった。







その時。


教室の色が少し晴れた気がした。












(お前バカやろ)
そう話しかける、休み時間。










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