短編、中編
□いま、伝えたい事。
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※立海の卒業の時のお話です。
少し幸村の病気の話有り
逃げたしていた。
走って走って、今の状況や"今"の変化が怖くて逃げていた。
まだ4月にもなっていなくて、まだ3月の中旬頃。肌寒かったりする時期なのに走りに走った俺は背中に汗をかき、暑かった。
「今から先輩達の卒業パーティーをします!その後は部長の公認式ですっ。」
そう言ったのはレギュラーでは無いが同じテニス部2年のやつ。
俺は、先輩達の卒業パーティーまでは参加してその後スグに逃げてきた。
だって嫌だろ。
俺が部長だぜ?って事は…幸村部長が居なくて他の先輩達も居ないんだ嫌に決まってる。
俺がこの王者立海をまとめていかなければならない。
んなの、出来んのかよ…。
きっと俺は幸村部長みたいに強くない。
あぁ、精神面ではな?テニスではいつかあの3人のバケモンを倒さないといけねぇし。
本題にもどって。
幸村部長は一度病に伏せてしまったことがある。
柳生先輩がいってたかな…
なんか、ぎ、ギラン…ギランバスケット…だっけな…?
いや、ギランバレーだ!
幸村部長はギランバレー症候群に酷似した重い病気だって。
毎日のようにお見舞いに行った。部長も喜んでいてくれていたけど、俺にはわかった。
正直、俺達に来てほしくないと思ってる事を。
でも俺は俺達は幸村精市という一人の仲間がほっとけなかった。
先輩だから、友達だから来ているのではなく、仲間としていていた。
でもある日の幸村部長は何時もと違っていた。
それは関東大会で俺達が負けてしまった日。
真田副部長が病室に入り話していた。
次は、次こそは勝つ。とかなんとか。
その瞬間にキレていても大声をだす事のなかった部長が、感情をむき出しにして何か言っていた。
俺は動揺しきっていて何を言っていたか覚えてない。
…聞きたくなかっただけなのかもしれないな。
それから幸村部長は真田副部長に出て行ってくれないか。と言い、真田副部長が出てきたと同時にまた病室から幸村部長の聞き慣れない大きな声が聞こえた。
それは言葉では無かった。
あ゛あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ
なんて叫び。
不安や、やり切れない思いが積もった叫びだった。
俺は病室のドアにもたれていたがたっていらられなくなってその場にしゃがみ込んだ。
幸村部長は強かった。
あんな事があった数日後には前よりも何倍も強くなっていた。
それは俺が知ってるいつもの部長だった。
ま、恐さも増していたけど…。
幸村部長は、もう迷いは無い。と手術室へむかった。
もうって事はやっぱり、散々悩んで迷って辛い思いしてたんスね。
俺は幸村部長に何があってあの日のような事があったかは分からないけどまた、元気になってテニスをしている部長を見れるだけで嬉しかった。
それだけでよかった。
そんな部長は俺達レギュラー以外にも勿論、尊敬されていて今年の一年生は練習も真面目にしダラダラする奴は居なかった。
部長は何も言ってないのに。
幸村部長がそこに居るだけでみんなの気がしまっていた。
俺はそんな幸村部長みたいに強くて威厳があるような部長になれるのか?
病に掛かっても尚、平常心を作っていたような人間になれるのか?
俺はスグにキレて相手をボコボコにしちまう。
それを止めてくれる先輩達はいない。
自力でどうにかしなければならない。
そんなの出来るわけねぇ。
部長になんかなりたくねぇ…
部長なんかになったら俺の大好きな先輩達が居なくなるじゃねーか。
俺を一人にしないで下さいよ…
今まで通り馬鹿やって笑ってましょうよ!!
なんで一人にするんスか…!
置いていかないで下さいッスよ…
逃げだして川が流れている近くの芝生に座っていた俺。
確か、俺が小6か中1の頃真田副部長が何かしてた場所。
かいていた汗は冷たくなり少し寒かった。
「あーサミィな…」
一人でボソッと呟く言葉。
いつもなら先輩達がいて、"何言ってんだよぃ馬鹿は寒くねぇだろぃ?"なんて言う丸井さんに"寒くても大丈夫ぜよ。馬鹿は風邪ひかんからのぅ"なんて仁王先輩が言う。
でも今は、いつもと違って丸井さんに仁王先輩も居ない。
俺、一人だけ。
これから先、俺が立海の高等学部に入るまでずっと一人。
先輩達にありがとうとか、感謝の気持ち言っとけば良かったなぁ…
今さらってか。居なくなってからじゃ言えねぇよな…。かっこ悪りぃ
先輩…今までありがとうッス
言え無かった言葉を心の中で言うと、今まで一緒にいて楽しかった時間の記憶が目を開けているのに見えた。
楽しそうに笑う先輩達の顔に俺の笑い声。真田副部長の怒鳴り声。柳さんの開眼した時…無理やりやらされていた一発ギャグとか…、真田副部長の赤フンを気づかず踏んでしまっていた柳生先輩とか。
色々な思い出が頭をよぎる。
居なくならないで下さいっすよ…
ゆっくり目を閉じた。
ふわり。寒かった肩に何かがのる。
なんだ?とおもい振り返ると幸村部長が。そして俺の肩にはジャージ。
幸村部長の後ろからは丸井先輩に柳さん…仁王先輩に…次々と出てくる先輩達。
「途中で抜け出すなど、たるんどる」
いつものセリフを言う副部長。
「なんで…先輩達がここに…?」
「赤也がここに逃げ出していた確率、100%だからな。」
「赤也…だらしないよ。泣くなんて」
は?泣いてる?俺が…
んな訳ねぇよ。幸村部長。
「泣いてなんかないッスよ」
「マジで言ってんのかよぃ?赤也」
え?マジも何もだって泣いてないっすもん
「おい。柳生、ハンカチよこしんしゃい」
「たっく…仁王君は。どうぞ切原君」
俺に差し出されたハンカチは俺が柳生先輩の誕生日にプレゼントした物だった。
「使ってくれてるんすね!嬉しいッス」
「はい。プレゼントありがとうございました切原君。でも今使うべき人は私ではなく切原君ですがね」
なんて言って軽く笑う柳生先輩。まるで俺が泣いてるみたいに話しを進める先輩達。
「さっきから何言ってんスか?俺は泣いてないっすよ」
「切原君、動かないで下さいね」
柳生先輩が俺の頬をハンカチで拭いた。
「見てみんしゃい。赤也」
「お前が使ったハンカチ…少し濡れてんだろぃ?」
柳生先輩が俺に見せてるハンカチは確かに俺の頬に触れた所だけ色が濃くなっていて濡れているんだと分かった。
「赤也…泣くほど俺達が好きなのかい?」
幸村部長の言葉に俺は何かが弾けたんだとおもう。
「…はい。俺…っ、俺っ……、先輩っ達が…、大好きっす…っ」
今度はわかった。確実に俺は泣いてる。
目の前にいる先輩達が霞んで見えない。涙のせいでぼやける。
「俺っ…感謝してるっす…!!先輩達がいてくれたからっ…俺はっ」
自分の腕で目を隠し、泣きならがもなんとか思いを伝えようとする。
「…赤也、そんなに泣くもんじゃないよ」
優しい幸村部長の声。
全国大会の時、泣いていた俺に言ったセリフとほぼ同じ…。
「俺っ…先輩たちが…っ、大好きッス!!」
「赤也…ありがとう」
そっと優しく抱きしめてくれた部長。優しい匂いがする。
寒かった俺は一気に暖かくなった。
「男に大好きッスなんて言われても嬉かねぇけど…ありがとうな。赤也」
「あれ?ブンちゃん泣いとんのか?」
「ばっ、馬鹿!泣くわけ無いだろぃ!天才的な丸井ブン太様が」
「そうか…?まぁ俺も嬉しいきに。ありがとうな赤也。」
「今、赤也がそんな事言われたら余計に泣きそうになるじゃ無いッスか!と思ってるいる確率100%だ。…赤也、ありがとう」
「男なら泣くんじゃない!しっかりせんか!まぁ…でも、ありがとう。」
「マジでありがとうッス!!でも…先輩たちは俺の事…どう思ってるんスか?」
俺がそう聞くと、同時に言ってくれた。