短編、中編

□本当の好きと嘘の好きの相違
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私は先生に恋をしてしまった。



なんて始まりをする漫画。
正直意味がわからなかった。

どうして先生なんかに恋心を抱くのだろうか。
そしてそんな漫画を描いた所で感情移入がしにくいではないかと。


少し前までは、そう思っていたため家にある漫画にはそう言う設定のものはひとつも無かった。



が、現在。


自室には先生ものの漫画がたくさんある。
恋愛小説もそう言った類のものばかり。



原因はあり得ないと思っていた
先生への恋心が芽生えてしまったからである。


とは、言え少女漫画の設定はどれも高校生だ。

高校生と若い先生なら両想いになれるかも知れない。
歳の差もさほどないだろう。


だが私は現役の女子中学生である。
学年は3年。
受験生という大変な肩書きをもっている。
レベルは14。
もう少しで15に昇格だ。

念のために言っておこう、
レベルとは年齢の事だ。



私は何を言いたいかと言うと、先生の事が大好きでたまらないが
所詮中学生が大人と付き合えるだろうか、という事である。

それに同学年とも付き合った事がない私がいきなり先生。
いくらなんでもハードルが高すぎるだろう。
なんてツッコミは誰も笑えない。





よし、ここで私が好きな先生の紹介をしよう。



年齢は分からない。
まだ先生に聞けていないからだ。
でも見るからに若いから20代は確定。

好きなものは、馬。
馬が好きっていうかギャンブルが好き。
馬にかけてお金を当てるのが好き。


担当科目は国語。
それで二年生を担当。
なんで三年生じゃないんだ!!なんて毎日思う。
三年生担当だったら会う機会も喋る機会も増えるっていうのに…なんて考えだしたら止まらなくなる。

…でも私が一番得意な科目が国語で良かったな、とは思う。

なんだか先生と好きなものを共有している気持ちになれるからだ。


他は、テニス部の顧問をしていること。
基本はあまり熱くならない性格みたい。だけどテニス部の事になると真剣で真面目で部員の事を真っ先に考えている熱くて素敵な部分が垣間見る事ができる。
大好きな馬で当てたお金だってテニス部のためにガントレットにしてしまったくらい。
そんな意外性のある先生。


口癖なのか何なのか分からないけど、よく「1こけしやろう」っていう。
一体なんだろう。
こけしをあげる事になにか大切な意味があるのだろうか。
…まぁ私は先生から貰うそのこけしを「先生からのプレゼント」と称して部屋に飾っている。

いや、ベッドに置いて毎日一緒に寝ている。

が正しい。嘘も語弊もないのはそれだ。


もっと詳しく言えば、先生だと思い抱きしめる時もある。

そんな重症な私が好きなのは
渡邊オサム
である。



後ろの席の人や隣の人とは話があうし喋りやすい、それにテニス部だからオサムちゃんの事を聞ける。
そんな利点があって私はオサムちゃんが好きだと教えている。
2人はまぁまぁ話しを聞いてくれる。
時々、オサムちゃんを否定する時はあるけれど。

だから授業中でもオサムちゃんの話を聞いてもらっているのだ。
私がそんな恋愛の話を真面目にできるのはその二人だけ。
あとは他クラスの一番なかがいい趣味のあう友達くらいだろうか。
他の友達は相手が先生だと言う事でろくに話も聞いてくれない。
正直、教えなかったら良かったとすら思う。


余談だが、相談している相手と言うのは
隣の方が忍足謙也で後ろが白石蔵ノ介。
2人ともイケメンだし恋愛経験も豊富だろうからいいアドバイスがきける。


担当する学年も違えばなかなかあえる事はない。
私は放課後に職員室にいって先生に会える機会をつくっている。

職員室を覗くと先生は机に向かって作業をしていた。

話たいけれど今話かける事は遠慮した方がいい。
作業中の先生を邪魔してまで喋るのは先生に迷惑がかかるからできない。
そんな時は先生に気づかれないように、ジッと背中を眺めてその場で妄想して事なきを得ている。

妄想より現実がいいけど、脳内のオサムちゃんは現実のオサムちゃんより1.2倍優しくてエロい。


「ごめん、帰ろっか」
職員室まで付き合ってくれた友達に謝って私は階段をおりた。



(あー今日は先生と喋れなかったなぁ…)

沈みこむ私は必死で妄想をしてどうにかテンションをあげる。

(この階段をおりたら先生が現れて話かけてくれないかなぁ…)

職員室にいる先生がこんな所にいる訳がない。
わかっているけど、そんな淡い期待をこめて妄想をしてしまう。

出会ったら先生は私に名前ちゃんっていって笑ってくれる。


あー、話たいよ先生……






結局先生は階段をおりても現れなくて、分かっていたけど悲しくなった。



オサムちゃん…





「あーもう会いたい!」

「どうしたん名前?」

「オサムちゃんに会いたい」

「あー…」

「あってぎゅーってして欲しい」

「もう本当大好き」


友達に強引にオサムちゃんについてはなす。

あー私が噂してるから先生くしゃみしてるのかな?

先生のくしゃみって可愛いんだろうな。

てか先生ならなんでも可愛い。

うん、可愛い。

あーもう、本当に好き。

妄想するともっと好きになる。

でも先生の事を何もしらない。




「くしゅん」



下足箱の裏からくしゃみの音がきこえた。

ん?

気になって靴を履き替えたあと裏に回ると先生がいた。


「先生⁈」

「おう。」

「なんでこんな所にいんの?」

「…サボリ」
ちょっと目をふせて悪そうに言った先生。

「先生サボっちゃアカンやんw」

「だって疲れんねんで、人気者の俺は」

人気者……
知っていた事だけど。
女子生徒からも人気なオサムちゃん。
女子に囲まれている先生をみると心がつらくなる。

私以外の子は、先生を恋愛感情で見ていないってわかるけど
なんかしんどくて辛くて泣きそうになる。


「先生、人気者やもんなー。嫉妬しちゃうなぁ」

「ホンマ?」

「うん」
私は先生にどストレートに好きだという事を伝えている。
だってそれくらいしないと、大人の先生の頭に中学生の私なんてはいらないから。
真っ直ぐに好意を伝えるのは恥ずかしいし、勇気がいる。
だから私は先生と喋り終わると体温が上がって火照るし脈拍は上昇するし涙はでるし。

全然余裕ないじゃん。



「でもこの前、名前ちゃんもイケメンな男子に囲まれて話てたやん」

「あれは違うよ?」
先生を好きになって、最近、周りの男子。つまり異性を異性だと感じなくなった。
白石や謙也を女友達だと思うようになってしまった。
だからあれは違うのだ。
イケメンではなく言うなれば美女なのだ。


「…先生が大好きだから周りの男子とか興味ないし」

めいいっぱいの可愛いさアピールに上目遣い。

あ、これっていわゆるぶりっこてやつ?

まぁでも不特定多数じゃないし。
渡邊オサムっていう特定の人物だけだし。
許容範囲だよ。



「名前ちゃんがそうやっても、周りの男子は分からんで?」

「ん?」

「白石とか名前ちゃんの事好きかも知れんやん」

「ないよ!ない!だって白石のタイプと私は違うし」

「じゃあもし白石が告白して来たらどうする?」

なんで私は先生とこんな話をしているんだろうか。
私は先生が好きっていってるのにどうして同級生の白石の話をするんだろうか。
どうして先生は白石が私を好きだと言うんだろうか。
言えるんだろうか。

それは、先生が話題を自分から他者に変えたかったから。
それは、先生が私は本気にしているという事を知らないから。
それは、先生が私を恋愛対象として見ていないから。

そんな自問自答をしてみてもなにも有益な事は得られない。

ただ結果として残るのは、不快感だけ。


「勿論、断りますよ」

「なんで?白石はええ奴やないか」

「はい。でも好きにはならないと思うし恋愛相談を聞いて貰ってるし告白をしてくるなんて事ないですよ」

「はぁー。白石ええ奴やのになぁ。勿体無いわぁ。」


あー。先生って私の恋愛相談って所に触れないんだ。
興味ないんだ。
そりゃそうだよね。
興味もつ方が異例だよね。
イレギュラーだよね。


「私好きな人いますもん。一途ですから」


ヤンデレになっちゃうくらい。
先生の全てを知りたくなっちゃうくらいには好きだし。
むしろ先生には全てを知ってほしいし。
いっそ合体したいし。
吸収したい。いや、されたいかな。
うん、とりあえず私は先生が大好きだから。



「青春だね〜。ほら1こけしやろう」

「やった!ありがとう、先生っ」

これでまた、先生からのプレゼント(自称)が増えた。



「喜んでくれんの、名前ちゃんくらいやわ」

「先生からのは、何でも好きだし大事にするからね?」

「ははっ」


私は本気だよ。
先生。


だから、私を意識してほしい。
年齢の壁なんか壊してほしい。

叶わない願いかな。

違うよね?


努力次第だよね。


私はそうやって信じるから。





end

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