長編(幸村・謙也)

□ストーリー2
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"精市君の首から下はもう、動きません。四肢麻痺です。かろうじて右手は動きますが手首だけです。運動は勿論、生活にも支障があります"











と、淡々とハッキリ他人事だという感情を込めて喋る医者。

もう少し、演技でもしたらどうだ。親の前だろう?
憐れみの感情は無いのか。

そんな事を考える余裕があったのは本当の最初だけだった。


直ぐに俺は痛い現実に打ちつけられた。
コップを持って飲んでいても、飲み終わる前に急に力が抜け、コップは地面にぶつかり高い音を出しながら割れるのだ。
俺は周りの人間が片付けるのをただ、車椅子に座って眺めるだけなんだ。

――何もできない――


そんな地獄をみた。




実際の所いうと、入院1日目とか完全にナメていた。
俺だって中三だもん。
神の子とか言われていても真田みたいに超お堅くて真面目じゃないしさ。看護師さんは綺麗かなぁ、とか院内で可愛い子に会わないかなぁ、とかさ。いっぱい考えたりソワソワしたよ?
わりかしちょっとだけ。
本当にちょっとだけ。
ワクワクもした。

だけど、やけにリアルな夢はそんな可愛い妄想すらする事を禁止したんだ。


…俺はこれからどうなる。





部員もいない一人部屋にポツン。
仁王が持ってきてくれたオモチャの銃。
シャボン玉。
…どう使えっていうんだ。
俺はそれを、直さずに枕元の棚の上に出していた。

なおさら寂しい。
孤独を感じる。
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