長編(幸村・謙也)
□ストーリー2
2ページ/2ページ
そんな寂しさから逃れるために、俺は絵本を開いた。
母が『精市が好きだった絵本だよ、寂しくなったら読んだら?』なんて冗談をいって持ってきてくれた物。
ストーリーは如何にもありがちな感じで。
だけど、俺は大好きだった。
何回も、何回もひたすら読み倒した。
――悪い怪獣に捕らわれた姫――
――その姫を助けるために立ち上がる王子――
王子は助けるために立ち上がる事が出来たけれど、怪獣がいる所まで行く手段がなかった。
村に荒らしにきた訳でもない怪獣は自分の所まで姫をさらって帰ったのだ。
しかし、怪獣がすむその場所はふつうの人間が長い時間いると有害で。
すると何処からか現れた魔法使いが怪獣の所まで運んでくれるんだ。
当時は(わぁ…!凄い)とか純粋な気持ちだったけれど、今は(なんで魔法使いが助けなかったんだろう)という感想だ。
だってそうだろう?
ただの人間の王子より、魔法使いの方が怪獣に勝てる確率は高いだろ?
ここまでは普通のストーリー。
まぁ、姫を助けるために立ち上がる所なんてありきたりだ。
だけどラストが凄いんだ。
今でもドキドキする。
助けに行った王子は戦うけれど結局は無理だったんだ。
戦っているうちに有害な空気にやられ弱る姫。
戦う事を諦めて姫を連れて帰ろうとしたところ。
死ぬんだ。
幼少の俺はかなり衝撃をうけ、言葉を失った事を覚えている。
姫と言っても王子からは姫なだけで、ただの村人なんだ。
そして王子もただの村人。
逃げる途中でしんだのは、姫。
怪獣が爪でヒトカキして姫…村人は安らかに死んだ。
当時俺は、ハッピーエンドじゃないと分かった時、死ぬのは王子だと思った。
たった一回ヒトカキされただけで簡単に死んでいく姫。
やけにリアルで。
よく読んで泣いていた。
そして今の俺も泣いていた。
この姫みたいに俺も簡単に死ぬのかな、
.