長編(幸村・謙也)

□ヘタレ1
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どうして俺はこんなやつなんだろう。何もできなければ何も言えない。行動をおこして気持ちを伝える事もできない。

あぁ、情けない。
俺がしっかりしていないせいで名前は何回涙を流し何回悲しい気持ちになったのだろうか。
悪いのは全部俺やのに。
こんな事になるなら名前を好きにならなければ良かった。
出会わなければ良かった。
…俺が生まれなかったら良かったんや。






―――白い記憶―――








「ね、謙也今日行きたい所あるんだけどさ…良いかな?」
俺の机に来て少し不安そうな顔をする名前はそういった。
今日は編み込みしてるやん。

可愛いなって言いたかった。
言えば良かった。今更後悔しても遅い。無駄やのに…。
その質問に俺は
「おん。ええよ」
って普通に返した。
もっと優しい言い方とかあるやん。なんで上手く言われへんねやろ。白石ならもっと上手く言えるやろうに。
「良かった!」
そう言った名前の表情は読み取れなかった。
…てか俺が下をむいてイグアナの本を読んでたからやねんけど。
「ホンマにイグアナ好きやね」
その声には元気がなかった。
いま思ったら、イグアナじゃなくて私をみて、構ってって言ってたんちゃうかな…って気がした。

事の始まりはこの誘いから始まった。
部活がない今日は名前と2人でマクドに向かう。
その途中、何回か名前は寒いと言いながら手にはぁ、と息をかけていた。
こんな時に手を握ってやれればいいのに。
頭の中では完璧にこなせる俺がいてるのに、所詮は脳内の忍足謙也。本物は何もできひん。
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