長編(幸村・謙也)
□ヘタレ2
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「なんで引っ越すん?」
ヤバイ。声裏がえった。
緊張しすぎやねん。ヘタレすぎんねん俺。ダサい。
「お父さんの転勤で…」
「どこに行くん?」
そんな事を言いたいんじゃない。本当は何処にも言って欲しくない。俺のそばに居てほしい。
「東京」
「そっか…学校とかは何処なん」別れたくないのになんで自分から別れを認めるような事言ってんの?そうしないと会話が途切れてそのまま名前との縁も途切れそうなんが怖いんやろ。
「氷帝…。謙也の従兄弟がいる所だよ」
「そうか」
なんで名前を引き留める言葉が出ないんや。
かっこいい言葉じゃなくてええやん。
普通の言葉でええやん。
だから俺の勇気!!動いてくれっ!
「……別れよっか。謙也」
「……」
なんで俺は何も言えない!
そんなんじゃアカン!
別れたくないんやろ!!
「何でや」
「…だって。」
「名前は好きな奴おんのか?」
「…分かんない」
「分からんの?」
名前は遠距離が嫌なんじゃなくてただ俺に飽きただけなんかもしれん。
「だって……!」
そう言って名前は涙を流した。
「っ!?」
名前はただ俺の方を見て綺麗に涙を流すだけ。
何で名前が泣いてんねん。
むしろ泣きたいのは俺やねんけど。名前には別れようって言われるし、何も言えないヘタレな俺はいるし。
「名前…?」
「…ゴメン。勝手に泣いたりして。迷惑やんな」
「迷惑…?」
「うん。…だってそやろ。謙也は優しいから何も言わないけどこんな人がいっぱい来る所で泣かれたら…」
「何でそんな事いうん?」
マジで分けわからん。
「だって…。謙也はうちの事、好きじゃないんやろ?……嫌いなんやろ。」
そう言って下を向いてしまった。誤解や。俺が名前の事を嫌いな訳ないやん!
「だから……別れてよ。…もぅ辛い思いすんのも嫌やし、謙也に嫌われ続けんのも嫌や…返事頂戴よ…」